Tabelog Tech Blog

食べログの開発者による技術ブログです

職能を超えてユーザーに真摯に向き合う場所、カスタマーフライデー

はじめに

こんにちは。食べログのメディア企画部プロダクトチームの日下です。
私は2021年1月にカカクコムに入社し、食べログに参画しました。ちょうど2年になります。

メディア企画部は、ユーザー向けサービスの企画開発を推進する部署です。
今日は私が入社以来、運営を続けてきているユーザーインタビュー(通称:カスタマーフライデー)についてお伝えしたいと思います。

本記事では食べログでの継続的なユーザーインタビューをなぜ・どのように行っているか書いていきますので、
「食べログならユーザーの意見ちゃんと聞いてるよね?」
「食べログってどんな職種であってもユーザーの声を聞くことはできるの?」
と気になる方に参考になれば幸いです。

カスタマーフライデーとは

その名の通り「お客様の金曜日」ということで、毎週金曜日、実際に食べログを利用するユーザーさんの様子を見て、ユーザーのことを考える会です。
月毎にテーマを変えていて、インタビュー前にリリースした施策や、直近課題となっていることをテーマとしています。
実際に開発に携わったメンバーは、ユーザーが使ってくれている姿を見て、本当に使ってもらえているんだという実感が湧きますし、そこから見えてくる課題も多いです。
毎週金曜日、というのはユーザーも次の日が休みで気兼ねなく参加できることと、 食べログの参加者も1週間の終わりにユーザーの声を聞いて、次の週の開発に活かしていこうという意欲につなげられるのでは、というところから決まりました。
あとは、フライデーというのがなんとなくいい響きだからです。笑

私がメディア企画部へ参画する昨年まで、実は食べログでは定期的なユーザーインタビューは実施してきていませんでした。
食べログって使いやすいし、開発したものに対してユーザーの声をちゃんと聞ける仕組みがあるんだろうな・・と思っていたのでこれは意外でした。

毎週金曜日なので月あたり3〜5回実施していて、始めてから約1年が経ちます。
始めた当初は20〜30人くらいの参加人数だったのが、今では毎回50名程度が参加するイベントとなっていて、 食べログにはさまざまな部署がありますが、職能を超えてこの時間だけはユーザーに対して真摯に何がベストであるかを言い合える場所になっています。

こういったインタビューは、企画・デザイナーがメインで参加していて、エンジニアが参加することは少ないと思いますが、オープンな場にしていることもあり、食べログではエンジニアの参加率が非常に高いです。
実際に、インタビュー中社内のチャットでは、企画・デザイナーのアイデアに、エンジニアから技術的なアイデアを重ねて
「こんなやり方ができますよ」「え、じゃあすぐやりましょう」というような会話がなされています。
具体的な様子は、実際の様子・活用事例でご紹介します。

なぜカスタマーフライデーをやっているのか?

ユーザーのニーズをキャッチできるように

カスタマーフライデーの始まりは、メディア企画部全体として、 今の開発サイクルを回していくにあたり、ユーザーの生のフィードバックをもらい改善に繋げていくことが重要だと感じていて、 それを食べログ全体の定期的なイベントとして実施していけないだろうかという想いから始まりました。

それまでの食べログは、いわゆるウォーターフォール型で、将来を予測し、事前に綿密な計画を立てる必要がありました。
そして大きなプロダクトをひとつのサイクルで完成させていました。
一方で、カスタマーフライデーを始めた頃、一部のチームではアジャイルに近い形で開発を進めていて、 ユーザーのリアルタイムなニーズやフィードバックを受けて、小さな単位で改善を繰り返し実行し、変化に柔軟に対応していきたいと考えていました。

これは小さな単位で改善を繰り返す様子を説明した画像です。

開発現場の共通言語に

また、開発の現場ではよくあることだと思いますが、以下のような経験をしたことはないでしょうか。

これはユーザーが抱える課題に即さず仮説を立てている例を説明した画像です。

ユーザーが本当にその議論している課題の解決を熱望しているかわかりません。
こんな時、実際のユーザーが目の前にいれば良いですが、そんな好都合なことはありません。
そんな時に実際のユーザーがサービスを使ってくれている様子=事実を見るのが、カスタマーフライデーです。

アップデートしていくプロダクトに対して、ユーザーが何を思い、何を感じているかを 企画者・開発者もアップデートしていくことで、上記のような机上の空論を減らしていくことができます。

最近では、開発の現場でも、偉い人との会話の場でも「カスタマーフライデーでは〜」という声が当たり前のように聴かれるようになりました。
目の前のユーザーが抱える課題をリアルに伝えられることがカスタマーフライデーの強みです。

実際の様子、活用事例

基本的にユーザーには、普段利用しているデバイスでZoomに入ってもらい、そこで自分のSP・PC画面を共有してもらっています。
Webインタビューの歯痒いところは、実施のユーザーの指の操作や、動作、表情が見えないことですが、Webインタビューでも十分伝わってくることが多いです。

これはユーザーにZoomに入ってもらいユーザーのSP・PC画面を共有してもらっている様子を説明した画像です。

例えば、こんな会話からユーザーがなぜお店を探しにくいのかがわかります。
「さっき見かけたバナーからポイントがもらえる対象のお店で予約したいんですが、どこからそのバナーを見つけられるかわからないんですよね」
「他社を利用していると、エリアとジャンルを入力して検索するんですが、食べログではどこから入力すれば良いのですか?」

こういったインタビューの間、社内チャットでは職能を超えてさまざまな意見が交わされています。
カスタマーフライデーが始まった当初は皆何を書いて良いか分からないことも多く投稿も控えめでしたが、 今では、真剣にユーザーの生の声に向き合い、同じようなユーザーにとってのベストは何かその場で意見を出し合うことが当たり前になってきました。

これはユーザーの様々な意見を説明した画像です。

カスタマーフライデーが終わった後、食べログにはアイデアボードという誰でもアイデアを起票できるボードがあるのですが、そこで多くのチケットが立ちます。
また、昨年度はカスタマーフライデーを活用した大型施策のリリースも実現しており、着実にユーザーの生の声を施策に反映していく文化が根付いてきています。

カスタマーフライデーを始めるまでの道のり

ここで、カスタマーフライデーを始めるまで道のりについて触れたいと思います。
私自身、大学時代・前職でフィールドワークとして対象者に街頭インタビューを実施して調査分析をした経験もあり、 「ユーザーの生の声に耳を傾ける」ことはとても興味深い分野でした。最近は、UXリサーチの1つとしても着目を浴びてきています。

食べログでインタビューを始めたのは入社して間も無く、新規事業部にいた頃に始まります。
新規事業部では限られたリソース・限られた時間の中で、仮説検証サイクルを回し、 いかに早くユーザーにとって価値ある最小限のものが届けられるかが重要でした。 とあるリリースを境に、ユーザーがサービスを使わなくなった理由が何なのか、 データ上だけではわからないことをインタビューで実際のユーザーに聞いていこう、ということで始まりました。 また、コロナ禍ということもあり、Web会議を使ったインタビューでの実施でした。

ここで大きな壁にぶつかることになりますが、この壁にぶつかったからこそ今カスタマーフライデーで毎週定期的に実施できています。

まず、ユーザーインタビューを始めるには、以下のフローを踏むことになります。

これはユーザーインタビューを始める際のフローを説明した画像です。

上記フローの中でユーザーとのコミュニケーションが発生しますが、これは全てメールでのやりとりでした。
私も含め多くの方が経験あると思いますが、テキストコミュニケーションでメッセージを受け取るタイミングはそれぞれに委ねられるので、 レスポンスがすぐに帰ってこない場合、そのコミュニケーションを見落としていることが多いです。

そんな中でぶつかった壁は「インタビュー日程をメールで連絡しても当日ユーザーが現れない」でした。
メールでのやり取りを見過ごした結果、予定の日を過ぎていた・・ということが想像できます。
当時は5人予定していたら4人は現れない、というような状況で、Web会議の画面越しで自分の顔を見つめる時間が続きました。

そこで、この時着目したのが、スクリーニング〜インタビュー実施までのプロセスです。
それまでの流れは、候補日に参加できると回答したユーザーに対し、この日程でインタビューをさせてほしいと一方的に日程調整のメールを送っていました。
これでは、メールを見過ごせばその日程であることを認識できません。

そこで、これまでメールでやり取りしていた日程調整をユーザー自身にしてもらう、という流れに変えたことで劇的にインタビューへの参加率が上がりました。
日程調整をユーザー自身にしてもらう方法は、現在継続しているカスタマーフライデーにも活かされています。

裏側のはなし

最後に、新規事業部の頃のインタビュー経験を経て、現在カスタマーフライデーをどのように毎週実施しているかお伝えしたいと思います。
運営は基本私1人で行っていて、募集〜インタビュー実施までを週1〜2時間程度で行っています。
大きな流れとしては以下図の通りとなっていて、インタビュー実施以外は月1回対応です。

これは規格からインタビュー実施までの流れを説明した画像です。

また、食べログではインタビューを外部に委託しています。
インタビュー調査のスペシャリストにインタビューに入ってもらうことで、先入観のないユーザーの深いインサイトを引き出すインタビューを行うことができます。

簡単に各ステップにおけるポイントをお伝えすると

  • 調査企画
    毎月のテーマを前月の下旬に企画内で決めていきます。 インタビュー前にリリースした施策や、直近課題となっているテーマを扱うことが多いです。

  • リクルーティング
    対象となるユーザーをBigQueryを利用して抽出し、インタビューの事前アンケートを送ります。 アンケートはMicrosoft Formsを利用しています。

  • スクリーニング
    ここが、新規事業部の時に改善したプロセスです。 アンケート回答から対象となるユーザーをスクリーニングしたのち、対象ユーザーに対して先着順で日程予約をしてもらいます。 この時の予約フォームはMicrosoft Bookingsを利用しています。誰でも簡単に予約フォームを作れる優れモノです。 対象ユーザー自身に日程予約してもらうことで、ユーザーが自分で予約した日時を覚えてくれていることで、 予定の時間にユーザーが現れないことが格段に減りました。

  • インタビュー
    実際のインタビューは、ユーザー、外部委託インタビューイー、私の3名が入室したZoomで行っています。 そのZoom画面を私がTeamsで社内に画面共有・投影しています。 これによって、Zoomにたくさんの視聴者が入り、ユーザーの心理的負担になることを避けています。

さいごに

ここまでカスタマーフライデーの全容についてお伝えしてきました。
カスタマーフライデーを始めて、約1年になりますが、 カスタマーフライデーを通して、食べログ全体でユーザー起点で定性的な情報を収集しながら「仮説」を組み立て施策に落とし込んでいく文化が根付いてきたように思います。
また、開発のプロセスの中でカスタマーフライデーで聞いてみよう、という考え方がじわじわと浸透してきました。

今は食べログを利用するユーザーに対してのインタビューとしてカスタマーフライデーとして実施していますが、 今後は店舗や新規サービスなど、様々な分野・視点でも活かせるイベントとして成長していけたらと思っています。