この記事は 食べログアドベントカレンダー2025 の12日目の記事です🎅🎄
先日以下の記事を書きました、食べログカンパニー 開発本部 飲食店プロダクト開発部 羽澤と申します。
この記事の中で、"現在では Devin や Claude Code も導入されており" と書いたのですが、実はDevinの導入に深く関わっていました。その中で、涙なしでは語れない出来事や、それを起因とした意識と行動の変化や学びがありましたので、アドベントカレンダーという場を借りて語ります。ぜひ読んでください。
序章:Devinとの出会い
4月のある日、企画から新しい案件の打診を受けておりました。 これはすでにリリース済みでプレスリリースも出ているのですが、食べログ求人における有料サービスを作りたいというものでした。ある程度大きい規模の案件です。 上長と1on1で話している時にこの案件の話題になり、「Devin使ってみない?」という提案をいただきました。AI活用を主導する部署であるAIトランスフォーメーション推進部(以下、AX部)にてDevinの検証が行われており、食べログのメンバーも数名関わっていることを知りました。
この案件は有料サービスを作るものですので、社内の精算業務をはじめとした業務設計が必要です。システム面でも食べログ求人というシステムと社内の販売管理システムの連携も必要でした。要件定義から業務設計、システム設計までの比重が大きい案件ということです。逆に実装フェーズ以降については新サービスであるため既存機能の影響を受けづらく、全体スケジュールに対しての比重は小さいと考えていました。これらのことから、実装フェーズでチャレンジして仮に失敗したとしてもリカバリ可能という判断に至り、Devinに任せてみようと決断します。
一方ビジネス視点で見てみると、食べログ求人というサービスをマネタイズするための1歩となる重要な案件でした。食べログ求人はその他にも急ピッチで機能追加を行っている状況でしたので、それも止めたくはありません。ビジネスサイドとしては、エンジニアを採用してでもすぐに推進したいという意志を持っていました。
この状況でDevinを利用するということはすなわち「Devinを利用して1人分の成果を追加で出す必要がある」ということです。このチャレンジングなテーマについて、案件を任せるユニットのリーダーに打診しました。初めて使うDevinでしっかり成果を出せるのか、ユニットリーダーとしても不安の色があったのは確かでした。しかしリカバリプランを検討し、うまくいかなかった場合の対応を決めた上でチャレンジしてみることになりました。
その結果がこちらの記事となります。
記事を読んでいただけるとわかるのですが、最終的には期待通りの成果を出すことができました。
Devin、全社展開へ!
6月頃だったと思います。あれこれ検証しながら実案件で利用して慣れてきた頃、AX部からDevinを全社で試せるように展開するという連絡がありました。 それと同時にこれまで検証に参加してきた経緯から、食べログカンパニーにおけるDevinの管理者になってほしいとオファーをいただきました。 Devin導入にあたり、各種設定や運用をスピーディーにするための役割となります。それほど難しいこともないと感じたため二つ返事で受けることにしました。もちろん部長陣の許可は得ましたよ!
運用ルールをサクッと決定
各種設定系は必要な時に必要なことをすれば良いので、運用ルールを決定する必要がありました。主にDevinを利用開始/終了時の申請方法や、アカウントの棚卸しがメインとなります。 他のツールの利用開始/終了申請を参考とし、利用を開始する際の申請は、所属する部室長を経路に入れたワークフロー申請を上げる形と決めました。少々堅めの運用ルールとなりますが、Devinはコード修正を行えるツールとなりますので相応しい運用ルールだと考えました。 食べログカンパニー全体での運用になりますので、開発本部の本部長から許可を得るのが次のステップです。
本部長に報告。却下へ。なんで!?
弊社に限らず、組織にはさまざまな社内手続きがあるはずです。 私も管理職の端くれですのでいろんな管理業務を経験し、それらと比較しても大きく変わらない運用ルールを作ったつもりでしたし、数名に見せても違和感あるものではありませんでした。
しかしまさかの却下!!! フィードバックの要旨は、「会社が "AIを使って革新を起こす" という方針なのに、Devinを使えるようになるまで時間がかかりすぎるのではないか」ということでした。
反省と方向転換
指摘された内容を元に振り返ると、自分が「Devin関連を管理する」という視点だけで運用を考えていたことに気づきました。 AI活用を推進している経営側の視点に立つと、「Devinの利用を推進する」という役割を期待していたはずです。 この点で自分の方針と期待されている役割/視点がずれていたのだと考え、「Devinの利用を推進する」という視点で活動するよう、方針を変更しました。
Devin推進部(仮)爆誕へ
前述の通り、自分を「Devinの利用を推進する」という役割にアップデートして考え直しました。 自分をDevin推進部部長と定義し、今まで通り管理運用することから食べログの組織内でDevinを推進することに切り替え、以下のような行動をとりました。
ライトな運用に変更して利用を推進
形式ばったワークフロー申請はやめ、私と他数名に声をかけていただければすぐに招待する方針に切り替えました。 とはいえ、当初堅い運用を作ったのには理由があります。Devinはコード修正が可能なツールです。Cursorを利用した経験から、AIは依頼以上のことを実行してしまう危険性があることを知っていました。例えばメインブランチに対して勝手にコミットしてしまうなど、社内ルールを無視した操作が行われる懸念です。逆に言えばそれ以外に不安な点は無かったため、この点に対する不安を解消しておく必要があります。
GitHubの設定を再確認したところ、メインブランチに対しての直接コミットは行えない設定となっていました。またDevinは新しいブランチを作ることはあっても、明示的に指示しなければマージも行わないため、Devinに慣れていない人が前述のような事故を起こすことはないと判断し、 その後、各チームのチームリーダーと直接話す時間を作り、Devinのアピールと各チームメンバーのDevinへの招待をお願いすることで、ほぼ全てのエンジニアがDevinをすぐに使える状態に持っていきました。
Devinって何?という社内ブログを執筆して公開
Devinの特徴や使い方を記載して食べログの組織内に公開しました。すっごい簡単な内容ですが、ぱっと理解するには大いに役立ったとのことです。
Devin紹介記事冒頭

連載しようと思ったが、書くことがなくて寂しい状態となっている。(悲しい)

Tech MTGで発信。みんなの心のブレーキを取り外す
Tech MTG(テックミーティング)は食べログの全エンジニアが参加する会議で、各チームの取り組みや学びを共有する場です。2週間に1度のペースで開催しています。
Devinを広めるにあたって問題があったのはACUです。Devinはタダで働いてくれるわけではありません。ACUと呼ばれる報酬を必要とし、これが無いと仕事をしてくれません。 会社(AX部)で一定のACUを購入して食べログに割り当てていただいていましたが、これまでの検証結果と割当量を比較すると確実に足りない状況でした。調整はしてくれるとAX部の方はおっしゃってくれていましたが限度はあるはずです。この問題を突破しないとDevinが働かなくなってしまうため推進するのは難しいと考えました。
考えるまでもなく、これに対しては正攻法で行くしかありませんでした。仮にACUが足りなくなったら買うしかない。お金は、、、前述のようにDevinを使って成果を出せていましたし、上長からも後押しいただき、お金はどうにかなるという確信を持つことができました。
準備を整えたので、いざ広報です。 Tech MTGで以下のことを発信しました。
- Devinのアピール(書いたブログの紹介)
- 困ったことがあったら私に言ってほしいこと
- ACUはなんとかするので使いまくってほしいこと
- ACUを節約する工夫はしてほしいが、ブレーキをかける意図はないこと
この内容を発信し、食べログエンジニアにおけるDevin活用を本格的に開始しました。
Devin定例を週1で開催
ACUの問題がありましたし、Devin利用における障壁を早期に洗い出すこと、また各チームの情報交換を目的として定例を開催しました。参加メンバーは主に利用しているチームのリーダーです。 ACU問題が解消し、Devin利用も軌道に乗ったら終わりにしようと思って始めたものですが、結果的に今でも続いています。今は Claude Code も含め、AI推進定例という形に変わっており、情報共有や要望を拾い上げる場となっています。
稼働後はどうか
ACU問題は何度も発生
予想通りACUの枯渇は何度も発生しました。たくさん活用しているということでとてもありがたく感じたことを覚えています。AX部から割り当てられたACUを全て配っていたわけではなく、バッファとして残していました。ですのでそこから調整したり、利用が進んでいないチームから調整したりなどのやりくりをして運用しました。その上で何度かAX部に相談することもありましたが、長期間使えなくなることなく運用できました。 とはいえ一時的にDevinが止まってしまうこともあり、メンバーに不便な思いをさせてしまっていました。それを解消すべく食べログカンパニー独自で契約してACUの調整を不要にしようかと動き始めたところで、会社としてエンタープライズ契約が決まりました。 ACUも一定量を使い切った後は従量課金となったため、ACU枯渇でDevinが使えなくなることもなくなりました。 従量課金ということは、使えば使った分お金がかかります。そこを気にするメンバーもいましたが、コストを気にしすぎて活用が進まないのは本末転倒です。そこで私は「会社を困らせるくらい活用できたら勝ちだよ」とメンバーに伝えています。
今どうなってる?
企画職への展開
Devinではないのですが、企画職のメンバーにもCursorが広まっていました。しかしCursorよりも自律的に動いてくれるDevinの方が企画職には良いのではという意見がありました。 CursorにもAgentモードがあるので似たような使い心地は実現できますが、Devinはそれを前提にしているのと、Gitやらの設定も不要なため敷居が低いという特徴があります。 そのため数名をDevinに招待し、試したところ評判が良く、企画職にも広まりつつあります。
もちろん企画職というか、非エンジニアに展開するにあたりいくつかの不安もありました。不安を取り除きつつ活用を進めるため、非エンジニア向けのAI活用のガイドラインを作成し、それを読んでから使ってもらう運用をしています。
ガイドラインには以下のような内容を記載しています。
- AIを利用するにあたっての注意点
- 非エンジニアがAIを活用することにより期待していること
- 期待していないこと
期待していないこととしては、例えばAIにコードを解析させてそれを信じ込むことや、企画側でシステム設計に踏み込むことなどが挙げられます。 今の所トラブルはありませんが、課題はありますので後述します。
アクティブユーザー数
2025/12/02時点のデータですが、過去30日に1度でもDevinを利用しているユーザーは67名でした。Devinを利用可能な人数は開発本部だけで200名前後、企画職にも10数名存在します。母数を考えるともっとアクティブユーザーは増やせるかなと思っています。ただSREやiOSの開発者など、環境面でDevinと相性が良くなかったり、管理職のように直接開発業務を行っていないメンバーがいます。また他のAIツールをメインにしているメンバーもいますので、アクティブユーザー数は100まで行かないと想定しています。
またそのメンバーで870個のセッション(=タスク数)をこなしたようです。 調査やコードレビューでの利用もあるため、870リリースで利用されているというわけではありませんが、30日間で1人あたり13タスク程度。こちらはもっと上を目指せるように思います。
課題
非エンジニアがAIを使うことにより、細かい点に目が行きやすくなるのではないかと懸念していました。 これは、AIツールが具体的な技術的な手段を提示してくれるため、企画職が「これでできそうだ」と判断して技術的な検討に進んでしまうことが容易になると考えているためです。本来であれば、まず「何を実現したいか」という要求定義を明確にし、その後に「どう実現するか」という技術的な検討に進むべきです。しかしAIが技術的な手段を先に提示することで、要求定義が後回しになってしまう可能性があります。その兆候を感じることも出てきており、その辺りの調整は必要かなと感じています。
またDevinに限らずの話ですが、AIツールの活用にばらつきがあり、進んでいるメンバーやチームとそうでないメンバーやチームが出てきています。 最初のうちはAI活用を強要することなく、「使いたいと思った人が、使ってみるまでのハードルをできるだけ下げておく」という方針で動いていました。しかしその方針でいえばできることは少なくなってきています。活用が進んでいないメンバーやチームに対して積極的にヒアリングし、障壁を取り除くような取り組みも必要なフェーズに来ているのかもしれません。
上記2点はそろそろ向き合わなければならない課題と考えています。
終わりに
今回の取り組みで得た学びを改めてまとめます。
- 相談窓口を明確にし、相談には迅速に対応すること:「あの人に頼ればなんとかしてくれる」と思っていただくことが大切。普段の業務があり難しいこともありましたが、Devin関連の相談は優先度を上げて対応していました。
- 心のハードルを下げること:ACUという仕組みがあり、セッション(タスク)ごとにかかったコストが見てしまうのがDevinです。タクシーメーターのようにドキドキしながら見てしまうこともあります。ですがそれを気にしすぎると活用が進まないという現実があります。程度はありますが、「金は気にするな!」と言える状況作りと発信は重要と考えます。
- 「使ってみたい」から、「使ってみた」までのハードルをできる限り下げること:形式ばった申請をやめ、声をかければすぐに使えたり、わかりやすい説明書の存在などです。
- ある程度の調整と覚悟:今回はACU問題というわかりやすい調整事項がありましたが、対応せず進めてしまうとACUが枯渇してしまい、「Devin使えないじゃん」という評価になってしまったはずです。社内での調整事項に挑む覚悟と、挑んだ場合に勝てると確信できる状況を作っておいて良かったなと思います。
まだまだ前述した課題に立ち向かう必要はありますが、ユーザーの皆さんに価値を届ける速さ、届ける量を増やせるよう、活動していこうと思います。 これからも食べログをよろしくお願いします。
明日は Tabelog Tech Blog編集チーム による「食べログ年表」です。お楽しみに!
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