Tabelog Tech Blog

食べログの開発者による技術ブログです

年表で振り返る食べログ20年の歴史 〜20年分の感謝を込めて〜

この記事は 食べログアドベントカレンダー2025 の13日目の記事です🧑‍🎄🎄


はじめに

2005年3月にサービスを開始した「食べログ」は、2025年3月をもって20周年を迎えました。
20年サービスを続けてこられたのは、ご利用いただいているユーザーの皆様、食べログに掲載していただいている飲食店の皆様のおかげです。
心から感謝を込めてお礼申し上げます。
この20年間で、飲食店を取り巻く状況もインターネット技術も大きく変化しました。
それに伴い、食べログも時代に合わせてアップデートを繰り返し、20年間外食に関するニーズに応えるために成長を続けてきました。
私たち開発者にとっては、変化し続ける「ユーザー」と「飲食店」のニーズに応えるために技術でどう課題を解決するかに向き合った20年間でした。

今回、20年という節目に、食べログの軸となる「お店探し」「口コミ」「予約」「新規サービス」の4つの歴史を年表にしました。

食べログ年表全体 ここからは「お店探し」「口コミ」「予約」「新規サービス」にそれぞれ区切って、かつてはどうだったのか(As-Is)、どのような課題があり(Needs)、それをどう変えてきたのか(To-Be)。 それぞれの進化の裏側にある、技術的な意思決定と開発のストーリーをご紹介します。

1. 「お店探し」の進化史 — レビュアーと共に創り上げてきたお店探し

食べログ年表お店探し

食べログが誕生する以前、飲食店情報といえば、飲食店が掲載料を支払って広告として掲載する紙媒体(フリーペーパー)やウェブサイトが主流でした。そのため、広告宣伝を行わない「隠れた名店」や、地域に根付いた個人店などの情報はネット上で見つけるのが困難な状況でした。

レビュアーによる投稿口コミの掲載と「点数」という共通言語の確立(2005年〜2007年)

2005年3月、食べログはユーザー投稿型の口コミ情報を掲載する新しい飲食店情報サイトとして誕生しました。 飲食店側の契約や広告出稿の有無に関わらず、レビュアーが投稿した口コミ情報を掲載することで、ユーザーが本当に知りたい飲食店の情報を提供する新しいサービスの誕生でした。

当時のサービス名は「食べログ.com」。店舗検索、単純平均の点数、口コミ投稿という基本的な機能のみでスタートしました。 ユーザー投稿型でありながら情報の質を担保し、ユーザーにとっても飲食店にとっても「信頼できる情報源」であり続けるため、投稿された口コミはサービス開始当初から、のちにAIチェックを導入するまで継続して運営側で全件目視チェックする姿勢を貫き続けてきました。

初期のお店探しは、新着口コミから見つける機能、点数ランキングから見つける機能、都道府県一覧、店名・電話番号検索、地図から探す機能(2006年〜)などを提供していました。 世の中のブロードバンド化の追い風を受け、写真投稿機能も追加され、ビジュアルでわかりやすいお店探しを実現しました。

2007年度からは「食べログ ベストレストラン」を開始。レビュアーがマイベストレストラン10件を登録し、多くのレビュアーに選ばれたお店を発表する取り組みをスタートしました。レビュアーの投票によって価値を創造するという、食べログの根幹となる思想がここに表れています。

スマートフォンシフトと時代への対応(2008年〜2013年)

それまではパソコンでウェブサイトを見ることが主流でしたが、スマートフォンの普及に伴い、外出先でウェブサイトを見られる時代になりました。食べログは「外出先で飲食店を探す」という時代のニーズにフィットしました。

2008年にはiPhoneアプリ対応、2011年8月にはスマートフォンウェブサイトをリリース、同年にAndroidアプリにも対応。モバイルでの検索が主流となり、GPS利用による現在地検索が増加しました。早い段階からモバイル対応に取り組んできたことが、時代の変化への対応を可能にしました。

2012年、サービス最大の危機と信頼性の強化

しかし、モバイル普及により利用者が増加し、食べログの影響力が高まる中、2012年1月、やらせ業者による不正行為が発覚。金銭を受け取って好意的な口コミを投稿し、ランキングを操作する「やらせ」問題が社会問題となりました。食べログの口コミや点数の信頼性を脅かす、サービス開始以来最大の危機となりました。

この危機を契機として、従来から一貫して掲げてきた「信頼できる情報源」であり続けるという方針を、より一層強化することを決断しました。

具体的な対応として、まず不正口コミ検出システムを開発※1。複製で量産された不正口コミを自動検出し、運営側でチェックできる体制を構築しました。

同時に、点数ロジックの考え方を説明する「点数について」のページを独立させて公開。良いサービスであるために大切にしている考え方と取り組みを丁寧に説明することで、サービスの透明性と信頼性の向上に努めました。

この2012年の危機対応は、一貫して掲げてきた信頼性重視の姿勢をさらに強固にし、現在の食べログの信頼性の基盤を形成する重要な転換点となりました。

多様な価値基準の提供(2014年〜2018年)

グルメインフルエンサー全盛期や「インスタ映え」の時代においても、食べログは有名レビュアーを輩出するなど時代にフィットしてきました。キュレーションメディアやインフルエンサーといった時代の流れに対応しつつ、レビュアーと協力して価値を創出する姿勢は変わらず貫いてきました。

2014年には「食べログまとめ」を開始し、キュレーションメディアの流行に対応。2016年には(The Tabelog Awardの前身である)JAPAN RESTAURANT AWARDを開催。グルメ著名人サービスも開始しました。

「食べログ 百名店」の挑戦

2017年には「The Tabelog Award」と「食べログ 百名店」を開始しました。

The Tabelog Awardが高級店中心であるのに対し、食べログ 百名店はそれぞれのジャンルに特化して「普段使いのお店」にフォーカス。自分の好きなジャンルの美味しいお店を知ることができるという、食べログにしかできない画期的な試みでした。

サービス開始当初は認知度が高くありませんでしたが、徐々に広まっていきました。より多くのユーザーに役立ててもらえるよう対象ジャンルを増やしていく中で、「洋食」や「餃子」「ピザ」など、ジャンルの線引きには慎重な議論を重ねました。

次第に知られるようになり、3年後には「百名店」という言葉が日常会話にも登場するほど一般化しました。認知度の向上に伴い、ノベルティを多くのお店で飾っていただけるようになり、選出店によるSNSでの発信も増えました。注目度が高まるにつれ賛否両論も生まれましたが、それもまた「食べログ 百名店」がお店選びの重要な指標の一つとなった証でした。

AI・レコメンド技術による新しいお店探し体験(2019年〜現在)

AI技術の発展により、お店探しは新しい時代へ。機械学習やChatGPTなどの最新技術を活用し、ユーザー一人ひとりに最適化されたお店探し体験を提供できるようになりました。

2021年には推薦店舗表示機能の特許を取得※2。ユーザーの好みに合わせたレコメンドの高速化を実現しました。

2022年には「再検索サジェスト」機能を開発し、特許取得と意匠登録を取得※3。検索行動データを分析し、検索クエリの修正を簡単にしました。

AIチャット検索機能(ベータ版):新しいことへの挑戦

2023年には「AIチャット検索機能(ベータ版)」をリリース※4。ChatGPTとの連携が可能になると、いち早く便利な機能をユーザーに届けたい想いでローンチしました。

ChatGPT連携による対話型のお店探しは広く話題となり、Software Design 2023年12月号への寄稿にもつながりました。技術の可能性をいち早く取り入れ、ユーザー体験の向上に活かす姿勢は、食べログの20年間を通じて一貫しています。

サービスを支えた技術

※1 不正口コミ検出システム(2012年)

2012年のやらせ業者による不正投稿問題を契機に開発したシステムです。形態素解析・skip-bigramモデル・類似度算出の技術を組み合わせて実現しました。複製で量産された不正口コミを自動検出し、信頼性を保護しています。

※2 推薦店舗表示機能(2021年特許取得)

機械学習により生成したモデルを使用し、ユーザーまたは店舗のクラスタリングを実施。ユーザーに対するアイテムの推薦に関する計算量を削減し、短時間でおすすめを表示可能にしました。保存・ネット予約など好意的な行動をとった店舗が優先的に表示される仕組みです。

※3 再検索サジェスト機能(2022年特許取得・意匠登録取得)

検索クエリを集計・分析し、あるクエリで検索した後に入力されやすいクエリを特定。再検索時にサジェストとして表示することで、検索クエリの修正を簡単にしました。

※4 AIチャット検索機能(ベータ版)(2023年)

ChatGPTと連携し、対話型のお店探しを実現しました。ChatGPTとの連携が可能になって間をおかずにローンチし、広く話題となりました。

2. 「口コミ」の進化史 — "1店舗1回"から"リアルタイムな体験"へ

食べログ年表口コミ

食べログのサービスの根幹である「口コミ」。その投稿仕様は、ユーザーの「書きたい」「読みたい」双方の体験向上のため、時代とともに進化してきました。

サービス開始から2016年まで、食べログでは1店舗につき1回のみの口コミ投稿が可能でした。何度も訪問した場合は、1つの口コミに追記する形を取るしかありませんでした。そのため、「再訪した感想」や「ランチとディナーの違い」を書き分けられず、情報が古くなる懸念がありました。

「訪問ごとに感想を書き分けたい」

「訪問の記録として、もっと気軽に投稿したい」

「古い口コミではなく、最新の情報をユーザーに見てほしい」

こうしたユーザーや飲食店からの要望に応え、私たちは口コミシステムを進化させてきました。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。

ユーザー投稿型の口コミの確立(2005年〜)

2005年3月、ユーザーの口コミ情報からお店を探すことのできるウェブサイト「食べログ.com」の提供を開始しました。

口コミ投稿サービスと同時に、レビュアーガイドページやコミュニティページを通じて、レビュアーコミュニティを大切にしてきました。コミュニティページの機能の改善要望スレッドでは、レビュアーから寄せられた要望を食べログ運営が直接受け取りました。創立者を含む運営チームが直接レビュアーに会い、サービスへの要望をヒアリングして愚直に応えてきました。

この取り組みが実を結び、3年後の2008年頃には口コミ数No.1に。飲食店口コミサイトとしての食べログの地位を確立しました。

口コミの信頼性確保(2012年)

モバイル普及により利用者が増加し、食べログの影響力が高まる中、やらせ業者による不正行為が発覚。金銭を受け取って好意的な口コミを投稿し、ランキングを操作する問題が社会問題となり、口コミの信頼性を脅かされる事態となりました。

私たちは、第一章で触れたように、不正に作成された可能性が高い口コミを検出して運営側でチェックできる仕組みを構築し、口コミの信頼性回復に努めました。

さらに2012年1月には携帯番号認証機能を導入※5。レビュアーが携帯電話を使って認証することで、信頼できるレビュアーであることを示せるようにしました。

訪問ごとの投稿を実現(2014年〜2016年)

訪問ごとに記録を残したいというユーザーの要望に応えるため、システムを大幅に改修して訪問ごとの投稿を実現しました。しかし、その実現までには、大きな困難がありました。

2014年:最初の挑戦と学び

2014年10月、同じ店舗に複数回口コミ投稿が可能になる機能をリリースしました。しかし、既存のデータから新しいシステムへの移行処理に問題が発生し、ユーザーからの問い合わせを受け、わずか3日後に新機能を取り下げて元のシステムに戻すことを決断しました。

2015年〜2016年:慎重な再設計と成功

2014年の経験から教訓を得て、2015年11月から約9ヶ月かけて完全に新しいアーキテクチャで設計し直しました。

フォロワーのみ公開や非公開といった複雑な公開設定も考慮した設計とし、データ移行は段階的に実施。ユーザー体験を損なわないよう細心の注意を払いながら、慎重にモニタリングしながら進行し、2年かけて訪問ごとの投稿を実現しました。この新しい仕組みを活かし、「行ったカレンダー機能」も追加。行ったお店が日付ごとにカレンダー形式で見られることで、より楽しく飲食のライフログを残せるようになりました。

AIによる口コミチェックの進化(2023年〜)

口コミ投稿件数の増加に伴い、全件目視チェックの運用コストが課題になってきました。そこで、2023年にAIチェックを導入しました※6

問題のない口コミを自動フィルタリングすることで、大幅なコスト削減を実現しつつ、高い品質を維持しています。20年以上続けてきた「信頼できる情報源」としての姿勢を、AI技術で進化させました。

サービスを支えた技術

※5 携帯番号認証システム(2012年)

レビュアーが携帯電話を使って認証することで、信頼できるレビュアーであることを証明できるようにしました。当時は格安SIMの認知度が低く、端末のSIMロックもあって自由度が限られていたため、不正のために新たに回線を用意する手間やコストが大きく、有効な不正対策として機能しました。現在は以前よりも回線の入手が容易になったものの、レビュアーの実在性を示す仕組みとして現在も機能し続けています。

※6 口コミAIチェックシステム(2023年)

AIモデルを開発し、問題のない口コミを自動フィルタリングする仕組みを構築しました。複数のロジック・AIモデルを組み合わせて全体アーキテクチャを設計し、20年以上続けてきた品質基準を維持しています。

3. 「予約」の進化史 — "探すサイト"から"食体験を届けるプラットフォーム"へ

食べログ年表予約

食べログというと、多くの皆様は「お店を探すためのサイト」「点数を見るメディア」というイメージをお持ちかもしれません。しかし、現在の食べログは、単なる検索メディアから、「飲食店とユーザーをつなぐ"予約プラットフォーム"」へと大きな変貌を遂げています。

今回は、飲食店とユーザー双方の利便性を最大化するために、私たちがどのようにサービスを進化させ、その裏でどのような技術的課題を乗り越えてきたのか。その歩みをご紹介します。

かつては「電話」が当たり前だった時代

時計の針を少し戻してみましょう。 初期の食べログは、あくまでお店を「探す」ことが主目的であり、お店を予約する手段といえば「電話予約」が中心でした。

当時のユーザー体験には、明確な「壁」がありました。

  • ユーザーの課題: 予約をするには、飲食店の営業時間内に電話をかける必要があります。「仕事中のランチタイムに抜け出して電話する」「忙しくてかけそびれる」といった、心理的・物理的なハードルが存在していました。
  • 店舗の課題: 一方のお店側も、ピークタイムの忙しい最中に電話が鳴り止まない状況は大きな負担でした。調理や接客の手を止めて電話に出ることは、現場のオペレーションを圧迫する要因となっていたのです。

「時間帯を気にせず、Webでサクッと予約を完結させたい」

「電話対応の負荷を減らし、空席を効率よく埋めたい」

ユーザーと飲食店、双方から高まっていたこのニーズに応えることこそが、食べログの新たなミッションとなりました。

検索メディアから予約プラットフォームへの進化

ここからは、私たちがどのようにこの課題に向き合い、サービスを進化させてきたのかを振り返ります。

1. ネット予約の黎明期と「cena」の挑戦(2012〜2013年頃)

食べログのネット予約の歴史は、2012年2月に開始した「食べログヨヤク」に遡ります。これはあくまでベータ版としての位置づけであり、限られた範囲でのスタートでした 。

本格的な転換点となったのは、翌2013年1月です。レストラン予約サービスの大規模なリニューアルを実施し、オンライン予約事業のポータルとして新サービス「cena(チェーナ)」を本格始動させました。当初は高級店をメインターゲットに、ユーザーと飲食店双方にとってスマートな予約環境を実現するプラットフォームとして展開を開始しました 。

特筆すべきは、その開発体制です。当時はわずか3名程度の少数精鋭チーム。スタートアップのようなスピード感で開発を推進し、当時まだ珍しかった「Web上での即時予約(その場で予約確定)」を実現しました。これにより、ユーザーは24時間いつでも予約が可能となり、現在の「ネット予約文化」の礎が築かれました。

2. 予約台帳アプリからSaaSプラットフォームへ(2017年〜2021年)

次なる転換点は、店舗業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

  • 業務のデジタル化(2016年): iPad予約台帳アプリ「ヨヤクノート」をリリース。それまで紙のノートで行われていた予約管理をデジタル化し、現場の業務効率を飛躍的に向上させました。
  • SaaSとしての進化(2021年〜): さらに、予約管理・在庫管理・顧客管理(CRM)を統合したSaaS「食べログノート」へとリニューアルを行いました。

ここで重要だったのが、「予約」と「空席在庫」の完全同期です。 ネット予約が入れば自動で台帳の席が埋まり、逆に電話予約を手入力すれば即座にネットの在庫が閉じる。この「リアルタイム在庫一元管理」により、飲食店が最も恐れるダブルブッキングのリスクを極小化しました。

また、単なる予約管理にとどまらず、過去の来店回数や注文履歴などのCRMデータを可視化することで、「常連客への最適化された接客」やマーケティング施策を支援するなど、店舗運営全体を支えるプラットフォームへと役割を拡大しています。

3. エコシステムの拡大とグローバル対応(2024年〜現在)

プラットフォームとしての価値は、食べログの外へも広がっています。

  • 外部プラットフォームとの公式連携(2024年): 自社サイトでの完結に加え、ユーザーの多様な利用シーンに合わせた連携を強化しています。 2024年11月にはLINEミニアプリとの公式連携を開始 。月間9,700万人以上(2024年9月末時点)のユーザー基盤を持つLINEアプリ上で、検索から予約までがシームレスに完結する環境を整備しました。 また、Google ビジネス プロフィールとの情報連携(口コミコム経由等)なども進め、MEO対策を含めた集客導線を強化しています。

  • インバウンド向けサービスの本格展開(2024年): 急増する訪日外国人向けに、多言語(英語・中国語・韓国語)対応の予約サービスを2024年6月に正式リリースしました。 DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)との協業により、予約時の事前決済機能を実装。 国内客とは異なり電話連絡や事後請求が困難な海外予約特有の「決済・連絡のハードル」を解消し、店舗が安心してインバウンド客を受け入れられる仕組みを構築しました。 海外ユーザーに最適化されたUI/UXと決済基盤により、国境を越えた食体験の提供を開始しています。

サービスを支えた技術的な転換点

このようなサービスの進化は、裏側にある技術基盤の刷新なしには語れません。 「検索メディア」から「予約トランザクションシステム」へ。エンジニアリングの観点から特に重要だった2つのポイントをご紹介します。

1. 複雑なテーブル在庫の論理モデル構築

飲食店の予約は、ホテルの「1部屋」の在庫管理とは根本的に異なります。 「4名席が満席」でも、「2名席を2つくっつければ4名様をご案内できる」というケースが日常的に発生するためです。

私たちは「cena」時代から培ったノウハウを活かし、単なる在庫数の増減ではなく、店舗ごとのテーブル配置や結合ルール(席の組み合わせ)を考慮して、システムが自動で予約可否を判定するロジックを構築しました。 この「柔軟な在庫モデル」の実装こそが、飲食店の現場で使える予約システムの心臓部となっています。

2. メディアからトランザクション基盤への進化

月間約1億人が訪れる食べログは、元来「参照(Read)」負荷への対策が主眼に置かれたシステムでした。しかし、予約機能には厳密な「更新(Write)」の整合性が求められます。

私たちはデータベース設計を抜本的に見直し、整合性とパフォーマンスの両立に挑みました。

  • 排他制御: 予約ボタンが押された瞬間に在庫をロックし、高トラフィック下でもダブルブッキングを確実に防ぐ。
  • 即時反映: 予約確定と同時に検索インデックスへ情報を伝播させ、検索結果に最新の空席状況を反映することで機会損失を防ぐ。

このアーキテクチャの確立により、大規模なアクセスを捌きながら、信頼性の高い予約体験を提供することが可能になりました。

4. 「新規サービス」の歴史 — 口コミサイトから外食プラットフォームへ

食べログ年表新規サービス

「食べログ」というと、飲食店の口コミサイトであったり、ネット予約のイメージが強いかと思います。
実は食べログは、創業当初からそれ以外の新しいサービスの開発にも挑戦し続けています。
本章では、食べログが取り組んできた新規サービスの歴史を振り返り、現在新たに取り組んでいる飲食店DXに関するサービスについてご紹介します。

グルメサイトとしての幅を広げた懐かしのあのサービスたちを振り返る

年表を見ていただくと分かるように、2005年に食べログがサービス開始した後1年ほどで新しい派生サービスを展開しています。
女性向けのレストラン検索サイトの「食べログ for Woman」(2006年~2008年)や、長きにわたってご利用いただいたお取り寄せグルメに特化したサイトの「食べログ お取り寄せ」(2006年~2018年)、レビュアーさん同士の交流の場となっていた「食べログ コミュニティ」(2007年~2018年)がありました。
そしてなんと、「食ベラ」(2011年~2016年)という写真共有アプリもありました。今で言うインスタグラムのようなアプリで、料理の写真を美味しそうに編集することができたそうです。
この記事を書いている私としては、「食べログ お取り寄せ」や「食べログ コミュニティ」は長く続いていたこともあり知っていたのですが、「食べログ for Woman」や「食ベラ」はこの年表作成で初めて知りました!
当時に戻って使ってみたいですね☺️
サービス開始当初から数年は、グルメサイトとしてたくさんの方に使っていただけるようにグルメサイト、口コミサイトの派生系のサービスを開発してきました。
特に「食べログ コミュニティ」では、食べログの改善要望を書き込んでもらい、それを元に改善を重ねてきました。
ユーザーと共に食べログをブラッシュアップしていき、たくさんの口コミを書いていただけるグルメサイトとして立場を確立してきました。

コロナ禍の飲食店を支えるために爆速で開発した「食べログ モール」

新規サービスの歴史の中で、忘れてはならないのが「食べログ モール」(2020年〜2023年)です。
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、外食産業はかつてない危機に直面しました。「お店の味を自宅でも楽しみたい」というユーザーと、「来店が難しい状況でも、自慢の料理を届けたい」という飲食店の想い。この双方を繋ぐために開発されたのがグルメ通販サービス「食べログ モール」でした。
この開発で大切にしたのは、「作る人にも使う人にも嬉しいMVP(実用最小限の製品)」という考え方です。
コロナ禍でより早く「食べログ モール」をリリースしたいという状況で、単に機能を削ぎ落とすのではなく、「食べログらしい食体験(お店のストーリーが伝わること)」と「開発チームの持続可能性(疲弊せずに開発できること)」の両立について、開発に携わる全員で徹底的に議論しました。
作る人にも使う人にも嬉しいMVPをやってみた 〜実用最小限の見つけ方〜」の記事にもある通り、本当に必要な機能を見極め、勇気を持ってスコープを定義することで、コンセプト決定からわずか数ヶ月でのリリースを実現しました。
2023年にサービスとしての役割は終えましたが、困難な状況下で「価値の本質」を問い続け、チーム一丸となってプロダクトを作り上げたこの経験は、現在の食べログの新規事業開発における重要な指針として息づいています。

飲食店DXと「外食プラットフォーム」への進化

食べログが国内最大級のグルメサイトとして成長してきて以降は、飲食店の経営を支援する新規サービスを立ち上げ始めます。
背景にあるのは、飲食店を取り巻く環境の変化です。
近年飲食店業界は、慢性的な人手不足、原材料費の高騰、コロナによるライフスタイルの変化などの複数の課題に適応していく必要が出てきました。
こうした課題に対して食べログは、メディア側のグルメサイトとしてだけではなく、飲食店経営側を支援する「外食プラットフォーム」への進化を目指し始めました。
ここでは、その代表的なサービスと開発における取り組みを紹介します。

「食べログ 仕入(2019年〜)」

「食べログ 仕入」は、飲食店がスマートフォンから発注すると、卸業者にはFAXやメールで届く発注サービスとして2019年にスタートしました。
飲食店の発注業務は手書きやFAXなどを使用することも多く、手間のかかる作業です。それをスマホでより早くミスなくできるようにする飲食店DXに寄与するサービスです。
このサービスの開発の最大の特徴は、「エンジニアが飲食店に訪問して、ユーザーの声を直接聞く」ことです。
ユーザーの声を聞き、プロダクト成長にコミットするための取り組み」でも紹介されている通り、エンジニアが営業の訪問に同行して、飲食店様や卸売業者様の声を直接聞き、操作している様子を見せていただいています。
直接見聞きしたユーザーの要望を純度高く取り入れる開発体制を構築することで、何が必要とされているのかをエンジニア自身が考え開発するサイクルが根付いています。

「食べログ オーダー(2022年〜)」

「食べログ オーダー」は、お客様自身のスマートフォンから料理を注文できる店内モバイルオーダーシステムとして2022年にスタートしました。
注文業務をデジタル化することで、人手不足に悩む飲食店のオペレーションを支援し、お客様には「待たずに注文できる」快適な体験を提供するサービスです。
このサービスでは「絶対に止めない飲食店モバイルオーダーシステムの開発」にこだわっています。
POSやキッチンプリンターなど外部の機器と常に連携しながら動作するシステムの都合上、データの齟齬やネットワークの接続状況の不具合などが起きた際には、モバイルオーダーが機能せず店舗のオペレーションが止まってしまうリスクがあります。
例えばランチのピークタイムにシステムが止まってしまえば、お店に来たお客様にとっても、飲食店にとっても大損害です。
だからこそ、最悪の状況を想定したシステムの設計をすることで絶対に止めないシステムを実現しています。
また、この絶対に止めないモバイルオーダーの品質を支えているのは開発者だけではありません。
プロジェクト品質革新の鍵!『不具合分析』で開発プロセスを改革」でも触れられているように、企画段階からQAメンバーが参画し、早期にリスクを洗い出すことで手戻りによるコストの削減に取り組んでいます。
また、「リスクベースドテストのアプローチを使って重篤なバグを早期に検出しホットフィックスを防いだ話」にあるようにバグのリスクのレベル定義して、よりリスクの高いものから優先的にテストすることで、市場流出を防ぐ取り組みもしています。
「食べログ オーダー」ではプロダクト制作に関わるメンバーがワンチームで、安心して使ってもらえるオーダーシステムを作っています。

「食べログ 求人(2023年〜)」

「食べログ 求人」は、飲食業界の深刻な課題である「人手不足」を解消するために、2023年にスタートした飲食店専門の求人サイトです。
求職者にはお店の雰囲気や口コミなどの「リアルな情報」を、飲食店には「最短5分で求人票を作成できる」手軽さを提供し、飲食店の採用活動を強力にサポートしています。
このサービスの開発におけるキーワードは、「爆速での仮説検証」です。
刻一刻と変化する労働市場のニーズに応えるため、「食べログ新規サービスの開発チームにプロセスや考え方をインタビューしてみた」でも語られている通り、あえて食べログ本体の巨大なシステムとは切り離した「疎結合なアーキテクチャ」を採用しました。
食べログ本体のデータ(店舗情報や写真)を活用しつつも、開発サイクルを分離することで、モダンな技術スタックでのスピーディーな開発とリリースを実現しています。
また、エンジニアが企画段階から参画し、「どうすれば早く価値を届けられるか」を職種の垣根を超えて議論する文化も特徴です。
「作るだけのエンジニア」ではなく、「事業の課題解決にコミットするチーム」として、飲食店と求職者のベストマッチを生み出すための挑戦を続けています。

おわりに

2025年3月、食べログは20周年を迎えました。
20年という長い年月、サービスを続けてこられたのは、日々ご利用いただいているユーザーの皆様、共に歩んでくださった飲食店の皆様のおかげです。
改めまして、心より感謝申し上げます。

食べログの歩みは、「信頼できる情報源」であり続けるための挑戦の連続でもありました。
時代とともに飲食店を取り巻く状況や技術は進化し、食べログも単なる「お店を探すサイト」から、「最高の食体験を届けるプラットフォーム」へとその形を大きく変えてきました。
しかし、「ユーザーが本当に知りたい情報を届けたい」「外食産業に貢献したい」という創業以来の芯の部分は変わりません。

これからも私たちは、飲食店様とユーザーの皆様の声に耳を傾け、外食産業をより便利に豊かにしていきます。

今後も、食べログをどうぞよろしくお願いいたします。

明日は @sadashi さんの「食べログAndroidアプリの歴史」です。お楽しみに!


食べログでは、20年の歴史を未来へ繋いでいく仲間を募集しています!
ご興味のある方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。