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The Tabelog Award:レストランの国民栄誉賞を目指して

この記事は食べログアドベントカレンダー2025の22日目の記事です🎅🎄。

食べログ ブランドマーケティングチームの亀田郷平と申します。

今回は、食べログ20周年記念となるAdvent Calendar企画にて、私が統括を務めるレストランアワードプロジェクト「The Tabelog Award」(以下、アワード)の、これまでとこれからについてお話ししたいと思います。

「The Tabelog Award」(以下、アワード)は、食べログのユーザー評価に基づき、日本全国の「おいしい」お店を選出する年間のレストランアワードです。 専門家ではなく一般のユーザーによる投票で、Gold、Silver、Bronzeなどの賞が決定され、日本の外食文化を支える名店を応援することを目的としています。 対象期間において、食べログの点数更新日に4.00を超えた回数が2回以上のお店がノミネートされ、その後ユーザー投票を経て各賞が決定します。 ノミネートされる店舗は日本全国の数多の飲食店のうちわずか1%未満。 まさに、国内の頂点に君臨するトップレストランの皆様を讃えるプロジェクトといえます。

しかし、アワードは単なるランキング発表イベントではありません。 私たちが目指しているのは、「日本が世界に誇るレストランの国民栄誉賞」として広く認知され、アワードを通じて日本の豊かな外食文化を未来へ継承していくことです。

この記事では、アワードがどのように生まれ、進化し、そしてどこへ向かおうとしているのか。その裏側にある情熱と思想を、少しご紹介させていただきます。

THE TABELOG AWARD 2025

I. はじめに:純粋な「おいしい」が選ぶ、レストランの国民投票

食べログをご利用いただいている方であれば、誰もが「口コミ」や「点数」が、食べログのサービスの根幹を成していることをご存知だと思います。 アワードの最大の特徴も、一部の専門家による審査ではなく、多くの皆さまから食べログに寄せられた、きわめて公正で圧倒的な量の評価を基盤としている点にあります。

アワードは、そのステートメントにもある通り、食べログユーザーが『味』という基準で本当に好きなお店を選び抜く、いわばレストランの国民投票なのです。

アワードの起源と挑戦

アワードの礎が築かれたのは2016年、「JAPAN RESTAURANT AWARD」としてスタートした時でした。 それ以前にも「ベストレストラン」という企画がありましたが、開催する目的やコンセプトが曖昧だったため、食文化を熱心に支え続けている「食通」の方々(高級店・大衆店を問わず、時間とお金をかけて美味しいものを求め歩く層)の心に深く届くものにはなっていなかったという課題がありました。

そこで、「日本が世界に誇るレストランアワード」を意識してリニューアルし、日本の豊かな食文化を正しく称え、世界へ発信できる舞台を作ることを目的として発表されたのが「JAPAN RESTAURANT AWARD」でした。 この年には、レストランに加え、「JAPAN RAMEN AWARD 2016」や「JAPAN SWEETS AWARD 2016」も並行して開催し、その年のユーザーの支持を集めた店舗が「TOP50」として表彰されました。

「JAPAN RESTAURANT AWARD」からはデザインも一新され、「クラス感」「洗練」をキーワードに制作した檜の楯などのノベルティの導入や、格式を重視した会場選定等の結果、授賞式イベントへの来場店舗数は前年度までの約2倍以上へと増加しました。 さらに、SNSでの反響数も大きく飛躍し、私たちが届けたかった「食を心から愛する方々」からの共感を、確かに得ることができました。

その一方で、格式を高めても、あくまで食べログ上のランキングの切り出しであるという構造上、ニュース性に乏しいという側面がありました。そのため、PRにおいてもイベントに登壇されたゲストの方々の話題に埋もれてしまい、本来主役であるはずの「料理人や店舗の魅力」や「食文化の奥深さ」が、世の中に十分に伝わりきらないという課題も浮き彫りとなりました。 この課題こそが、アワードがただの「ランキング発表」から「権威あるレストランアワード」を目指すに至る、重要な転換点となったのです。

II. アワードの戦略的進化:権威確立と多様性の追求

2017年、「JAPAN RESTAURANT AWARD」のコンセプトと構造が抜本的に見直されました。 名称を現在の「The Tabelog Award」に変更し、「おいしいを、讃えよう。」をキャッチコピーとして、アワードの目指す思想が明確に打ち出されました。

1. ランキングからの脱却と「本賞」の確立

アワードのブランドを確立するための最も重要な変更は「ランキング方式の撤廃」でした。 従来のTOP50といった形式をやめ、Gold、Silver、Bronzeという階層的な賞の形式に変更されました。

また、賞決定までのプロセスについては、食べログの点数を反映したノミネート店の選出と、その後のユーザー投票による最終決定という二段階のプロセスを導入。

「The Tabelog Award」のスケジュール

これにより、ユーザーによるお店の評価という食べログ独自の膨大なデータを活かした公正性と、発表年度ごとのトレンド感をバランスよく反映した多角的な選出基準が確立されました。 これは、単なる順位付けではなく、店舗の偉業を讃え、名誉を与えることを第一義とするに伴う大きな決定でした。

  • Gold:この国のどこにあったとしても、生涯通い続けたいお店。
  • Silver:一生に一度は味わっておきたい、匠の技に出会えるお店。
  • Bronze:レストランを語るなら、押さえておきたいお店。

この構造変更とステートメントの明示により、アワードが単なる順位発表ではなく、受賞店にとって日々の研鑽が報われる「確かな証」として受け止めていただけるようになりました。

2. 評価軸の多様化〜部門賞の変遷と現在〜

アワードの根幹はユーザー投票による公正な評価ですが、日本の食文化の奥深さは、単一の評価軸だけでは語り尽くせません。 アワードでは、日本のレストラン文化に多角的にスポットライトを当てるため、本賞とは別に、時代やテーマに合わせた様々な「部門賞」を発表してきました。

例えば、2018年や2019年には、卓越した接客サービスを讃える「Best Hospitality」や、優れた知識を持つソムリエを表彰する「Best Sommelier」などを発表しました。 これらは、「味」だけでなく、レストラン体験を豊かにする「人」の力に焦点を当てた試みでした。

これらの変遷を経て、現在は以下の3つの部門賞を通じて、日本の食の多様性と未来への可能性を讃えています。

  • Best New Entry: 初ノミネート店の中から、特にユーザーの支持を集めたお店を表彰します。めまぐるしく変化する食のトレンドを捉え、新星のごとく現れた名店に光を当てる賞です。
  • Best Regional Restaurants(BRR):都市部以外のエリアにあるお店のうち、料理を通してその土地の風土や文化を深く味わえるお店として、ユーザー投票で最も多くの票を集めたお店を讃える賞です。2025年からは、その多様性をより広く紹介するため、対象エリアを6エリア(北海道・東北、関東、中部、関西、中国・四国、九州・沖縄)に拡大しました。
  • Chefs' Gold: かつて「Chefs' Choice」として料理人が尊敬する料理人を選出していた賞を、2024年に「Chefs' Gold」へと進化させました。これは、ノミネート店のシェフたちが「この国のどこにあったとしても、生涯通い続けたい」と指示するお店を讃える賞です。ユーザー投票という「食べ手」の視点に加え、プロフェッショナルである「作り手」からの敬意を可視化することで、技術と情熱の継承を促す重要な役割を担っています。

BEST REGIONAL RESTAURANTS (参考URL:The Tabelog Award | イントロダクションムービー)

III. 挑戦と共創:業界の未来へのエールと貢献

アワードが発表されてきたこの約10年間には、様々な試練もありました。 特に、新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、外食業界全体が苦難に直面する情勢下において、アワードが果たすべき役割を見つめ直す機会となりました。

2020年、日本政府による緊急事態宣言が発令され、気軽に外食に赴く日常が失われました。 翌年1月発表のアワード2021は授賞式イベントの開催を中止し、ウェブページでの発表のみに変更となりましたが、「KEEP THE FIRE — 灯し続けよう 厨房の火を 心の火を 外食の火を」というメッセージを掲げ、苦難に立ち向かう飲食店の皆様への感謝とエールを送り続けました。

そして2024年、アワードは3年ぶりの授賞式イベント再開を機に、ただレストランを讃えることに止まらず、「外食業界との共創」をテーマに掲げ、日本の外食文化の持続的発展に本質的に寄与することを意識したプロジェクトに進化さることとなりました。

次代への継承の視点で

アワード2025では、受賞店舗数653店舗、授賞式参加人数537名と、いずれも過去最高の記録を達成しました。 そして何より、この年の授賞式・懇親会における参加者満足度(NPS)は94%を記録し、これは同指標の取得を始めて以降過去最高の実績となりました。 次回につきましても、「もし再び選出が叶うならば、ぜひまた授賞式に参加したい」という回答が96.3%と極めて高く、アワードが飲食店・料理人の皆様にとって、日々の研鑽の先にある「目指すべき目標」として、少しずつ着実に受け入れられつつある実感を得ることができました。

この成果の背景には、単にイベントを豪華にしておもてなししたことに限らず、アワードを「食の未来を語り、次世代に繋げていく場」としてアップデートしていったことが影響しています。 例えば下記のような取り組みが、参加者の皆様に評価いただけたと感じています。

  1. 一次生産者との交流: かねてより料理人の皆様から要望があった、食材生産者の参加を正式に受け入れました。これにより、料理人の皆様が日頃から向き合っている素材のつくり手にも敬意を払い、交流を深める機会を提供できるようになりました。
  2. 未来の担い手育成: 未来のトップシェフを目指す料理学校の学生の皆様を授賞式・懇親会にご招待し、受賞店シェフとの交流の場を提供しました。次世代の担い手たちが、日本のトップレストランの熱気と格式を肌で感じ、将来の目標を見出す重要な機会となると考えています。
  3. サステナビリティへの配慮: 懇親会ではサステナブルフードを生かした飲食ブースを設けるなど、食の持続可能性という社会的なテーマにも貢献する取り組みを強化しました。

アワード2025 会場

これらの施策は、日本の食文化全体を支え次代へ継承していくためのプラットフォームとして、アワードの社会的な意義を、飲食店・料理人の皆様はもちろんユーザーに向けても伝えていくと考えています。

IV. アワードのこれから

そして、私たちは節目となる10回目を迎える「The Tabelog Award 2026」に向け、さらに挑戦的な中長期戦略を実行に移しています。

私たちが目指す究極のゴールは、アワードを通じて「日本の食文化を未来へ継承していくこと」です。しかし、その壮大な目的を達成するためには、このアワードが飲食店・料理人の皆様にとって「目指すべき場所」となり、生活者の皆様にとって「最も信頼できる指標」として機能しなければなりません。 だからこそ私たちは、日本において他に並ぶもののない、公正で影響力のあるアワードへと成長させることを目指しています。

その実現のため、私たちは、受賞店イベント出席率や満足度、ブランド認知率や理解度といった様々な指標をとらえながら、また新たな取り組みを創造していきます。 この記事の公開日時点で具体的に触れられないこともありますが、その一部を紹介いたします。

1. 業界を牽引し続ける偉業に賞賛を

アワード2026において、ある新企画の発表を検討しています。 それは、移り変わりの激しい飲食業界において継続して優れた評価を得続け、その長年の努力の積み重ねの結果として、業界の発展にも寄与してきたようなお店の偉業にスポットをあてる新たな取り組みとなると考えています。

2. ユーザータッチポイントの強化

アワードを生活者にとって「最も知名度と信頼性の高いレストランアワード」にするため、情報発信の方法も見直します。

従来は投票開始日まで非公開だったノミネート店情報を、アワード2026からは順次公開へと変更し、レストラン関係者とユーザーの双方において、アワード発表に向けた期待感と関心を高めていくことを目指します。 また、新たに「The Tabelog Award」公式インスタグラムも開設。今後、映像美とシズル感のある音響演出で言語圏を問わず楽しめる、独自の映像コンテンツを展開予定です。

ノミネート店一覧と公式インスタグラム

3. 世界のフーディーへ、「日本の食」を発信する

「レストランの国民栄誉賞」としての価値は、国内だけに留まりません。 私たちは、このアワードを世界中の美食家(フーディー)に向けた「日本の食の信頼できる羅針盤」へと進化させたいと考えています。 現在、食べログの多言語版は4言語で展開しており、インバウンド需要の拡大とともに着実にそのユーザー数を伸ばしています。 しかし、私たちが目指す場所は、単なる観光時の「便利なお店選び」や「予約」のツールとしての地位に留まりません。 「日本で最高の食体験をしたい」と望む海外のフーディーに対し、アワードにしか提供できない特別な価値、すなわち一部の批評家の視点だけではなく、実際の食べ手の熱量と集合知によって選ばれた「日本の総意としての名店リスト」を届けていくことです。
「日本のトップレストランを語るなら、The Tabelog Awardに触れざるを得ない」。 海外においてもそのような認識を広げ、アワードを通じて日本の食文化のレベルの高さと多様性を世界へ発信していくブランディングを、今後さらに力強く推進します。

The Tabelog Award受賞店(イメージ)

V. おわりに:ユーザーの声こそが、信頼の証

アワードが「レストランの国民栄誉賞」として、そして「日本で最も権威あるレストランアワード」として信頼されるための最大のポイントは、まさに食べログに集まる膨大なユーザーの声そのものにあります。

特定の審査員ではなく、実際にそのお店を訪れ、味わい、感動した一人ひとりの生活者の皆様の「おいしい」という純粋な評価の積み重ねこそがアワードの揺るぎない基盤です。 この、熱い想いの込められた圧倒的な量のユーザーの声があるからこそ、私たちは自信を持って、日本のトップレストランを讃えることができるのです。

これからもアワードは、公正性、多様性、継承性という独自の価値を深めながら、日本の素晴らしいレストランと生活者の皆様を、そして世界とをつなぐ架け橋であり続けます。

最後に、このプロジェクトは、私を含めた企画担当者だけでなく、デザイナー、Webディレクター、エンジニア、社外のパートナー企業各社、そしてレストラン関係者の皆様といった、数えきれないほど多くの方々の関与によって形作られてきました。 アワードに関わる全ての人たちが、それぞれに強い想いを抱いています。

20周年を迎えた食べログと、10回目の節目を迎えたアワード。 この重要な転換点を経て、アワードがどのように進化していくのか、ぜひご期待ください。 そして、皆様の「おいしい」という幸せな記憶が、この国の豊かな外食文化の輝かしい未来に繋がっていく道のりに、引き続きご注目いただければ幸いです。

明日は荻野さんの『食べログ20周年企画 コロナとともに入社した私が経験した「裏側の戦い」』です。お楽しみに!


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