Tabelog Tech Blog

食べログの開発者による技術ブログです

コロナとともに入社した私が体験した、「営業現場のリアル」

この記事は 食べログアドベントカレンダー2025 の23日目の記事です🎄🎅🎄

はじめまして。
食べログ事業で営業本部長を務めています荻野です。
今回食べログ20周年ということでTabelog Tech Blogに営業組織代表として執筆させていただくことになりました。 食べログは20周年ですが私は入社してまだ6年。
たかが6年と思われますがとても濃い6年だったので営業部署の苦労と進化を皆さんに感じて頂ければと思います。

まさかのタイミングで入社!これからだ!と思ったら…

食べログは今年で20周年という大きな節目を迎えました。
そして、私が食べログ(カカクコム社)に入社したのは、ちょうどこの激動の物語が始まる直前の、2019年11月のことです。

「さあ、これから外食産業の最前線でバリバリ働くぞ!」

やる気に満ち溢れ、これからたくさんのお店の魅力を世の中に広めていくんだと意気込んでいました。
まさか数ヶ月後に世界全体が止まってしまうなんて夢にも思っていませんでした。
入社してわずか半年後の2020年3月、WHOが新型コロナウイルスを「パンデミック」と宣言。そして4月には、日本で最初の「緊急事態宣言」が発令され、生活が一変しました。
飲食店は、休業や営業時間の短縮を余儀なくされ、街から活気が一気に失われました。
私たちの仕事である「お店の集客支援」どころか、多くの飲食店がこのまま潰れてしまうのではないかという危うい局面に立たされたのです。
私が体験したのは、食べログというサービスが、誕生以来最大の危機に直面した2020年から2023年春までの「裏側の戦い」です。

この記事では、以下について赤裸々にお話しします。

  • 有料プランを無償化するという、会社の覚悟
  • 営業現場にて「契約を取るな、飲食店に寄り添え」と目標を転換した理由
  • 困難を乗り越えた今、食べログの進化とこれから目指すもの

普段、皆さんが何気なく使っている食べログの裏側で、私たちが何と戦い、何を学び、どう動いたのかを知ってもらえたら嬉しいです。
そして、「これからも食べログを使おう」と少しでも思っていただけたら幸いです。

1. 月間20億円規模の「有料プラン無償化」会社が下した決断

2020年4月、緊急事態宣言が発令された直後、食べログの社内は緊迫感に包まれていました。
私たちにとって、飲食店の休業は、すなわち私たちの売上がなくなることを意味します。
ですが、それ以上に深刻だったのは、「このままでは日本の外食文化が失われてしまう」という危機感でした。
こんな状況で、会社が下した決断は、今思い出しても非常に重く、大きなものでした。

それは、「2020年4月と5月の食べログ有料プランの利用料など(月20億円規模)を、一律全面無償化する」というもの。
これは、創業以来最大の危機において、私たち食べログが「飲食店のパートナーシップ」を最優先した証だと、現場の私たちも強く感じました。
無償化対応だけではありません。現場では、お客様の状況に応じて柔軟すぎるほどの特別対応が行われました。店舗が休業せざるを得ない場合、契約期間中でも固定額を免除する「休会」措置や、プランを特別に下げて月額費用を抑えるプランダウンの受け入れを行いました。「通常であれば契約満了まで変更できません」というルールを一時的に外し、「お店が生き残る」ことを最優先したのです。
また、飲食店が一番困っていたのは「営業しているのか、テイクアウトはやっているのか」といった情報発信です。
この支援のために、お店がユーザーに直接情報を伝えられる「お知らせ機能」など、当時有料で提供していた一部の機能も急遽、期間限定で無料解放しました。
この時期、私たち営業がお店に電話をする主な目的は、「新しい契約を取る」ことではなく、「お店が今、どんな状況なのか」を聞き、「食べログとして今できることは何か」を伝えることでした。ここに費用が発生する提案は一つもありません。

この「会社の迅速な決断」が、多くの飲食店の支えとなり、結果的に食べログというプラットフォームそのものを守ることにつながったのです。
未曾有の事態の中で、グルメサイトとしてできる最大限のサポートは何なのか。その問いに、全社一丸となって向き合い続けた日々でした。

しかし、戦いはこれで終わりではありませんでした。次は、この厳しい状況下で、現場の営業たちがどのように「仕事」そのものを変えていったのかをお話しします。

2. 「売上の拡大」から「信頼の継続」へ。危機下で再定義した、営業のミッション

2020年春、緊急事態宣言下では、私たち営業も強制的に在宅勤務となりました。
外食産業全体が停止している状況で、これまでのように外に出てお店に足を運び、営業活動を行うことは物理的にも感情的にも不可能でした。
数か月前に入社したばかりの私は首都圏営業1部という全国でもっとも飲食店の多い東京のメインエリアの部長に就任。
メンバーは誰1人私と話したこともないメンバー40人。
そんななかでの在宅勤務。
メンバーはしゃべったこともない部長、慣れない完全在宅、外部環境はコロナ、お客様のところに足を運ぶことすらできない環境ということで不安で不安で仕方なかったと思います。

「新任部長として私はまずなにをすればよいのか」

私が考えたのは『1日1荻野』。
夕方18時前後に私自身の自己紹介を全メンバー宛てに1か月送るということでした。
みんなの心を開かせるにはこちらがまずさらけ出さないといけないと感じたからです。
1日1回チャットを送ると言ってもこれを続けるというのはとても大変でした。
これはメンバーから好評で私自身のキャリアや考えていることなどを伝えることができ、 このチャットを楽しみに1日を働いているというメンバーのコメントもありやってよかったと思っています。

1日1荻野(最終日)
皆さん、お疲れ様です。
1日1荻野を続けてきましたが、今回の投稿で終了したいと思います。
そもそも、1日1荻野を始めた理由は、11月1日に入社して、4月1日に組織体制が変わり、半分以上の方がはじめましてという状況の中、コロナによりリモートワークとなり、私自身を皆さんに知ってもらいたいからでした。

私がどんなことを考えているか、どんな学生時代を過ごしたか、社会人としてどんな経歴を歩んできたかを伝え、もうすべてをお見せした状態です笑
初の目的は達成できたと思っていますのでここで終了です。

思えば、
ネタがない日もありました。
疲れて書くのが面倒な日もありました。
過去の自分をさらけ出すことに葛藤がありました。
まさか、職務経歴書までみせるなんて。
というわけで今までご一読頂きありがとうございました。
これからは少しずつでも皆さんのことを知っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
One Day One Ogino, Forever, 👽👽👽


またこの時、一気に普及したのが、オンラインセールスツールです。
対面でお会いできなくても、画面越しに「お店の状況を知る」「伴走する」という姿勢を崩さないためのツールでした。
オンライン飲み会なども流行りましたね。例に漏れず私たちもオンライン飲み会を開催し、久々に顔を合わせて笑い合うのを実感したことを覚えています。
そうでなくても食べログ社員はコロナ禍以前は他の会社に比べて飲み会の回数が多かったので、オンライン飲み会を楽しみつつ、同時に直接会えない寂しさも感じました。

そして、この混乱のさなかの2020年5月には、現場の若手から発案された「サンキューカード」が始まりました。社内メンバーへの「ありがとう」や「おめでとう」を短文で伝えるこの活動は「1人ではない」を実感できるし、「称賛し合う文化」が生まれました。
在宅勤務の中での孤独感を和らげることができましたし、感謝や賞賛を口にすることで部としての一体感を保つために大きな役割を果たしたと思います。

状況が少し落ち着いた2020年下期以降、私は営業の目標設定を大きく変えました。
それは、目標を「新規契約の獲得数」から、「純増(新規獲得数から解約数を引いた数)の最大化」へとシフトさせることでした。
これは、つまり「新しい契約をいただくことだけでなく、今ご契約いただいているお店としっかり向き合い、長く関係を続けていただくことこそが重要」という、メッセージです。
このミッションを遂行するために、「エリア責任者制」を導入し、既存のお客様のフォローに特化したチーム体制を強化しました。
彼らの仕事は、まさに「厳しい経営状態にあるお店のご相談に乗り、解決策を共に探ること」でした。

2021年は緊急事態宣言と「まん延防止等重点措置(まんぼう)」が繰り返され、予測が難しい一年でした。
フォローチームは、常にお客様の状況を気にかけてご連絡し、時には「解約したい」というご相談に対しても、ただ手続きをするのではなく、ご事情を深くヒアリングした上で、休会やプラン変更など、お店にとって最善の選択肢は何かを粘り強くご提案し続けました。
その結果、ある期間には353件の解約申し込みのうち、113件(約32%)のお店が「それなら続けられる」「もう一度頑張ってみる」と、継続を選んでくださいました。
数字で見ると簡単に見えますが、これは厳しい状況下にあるオーナー様に対して、「食べログは必ず力になります」「一緒に乗り越えましょう」と、真摯に向き合い続けたメンバーの熱意の成果だと思っています。

営業状況の確認とリスト化に奔走した5月
ホットリストを作成した5月
ついに架電できた6月
ついに架電できた6月

そして、その努力が実を結び始めます。
2020年10月には政府主導のGo To Eatキャンペーンが始まり、外食の需要が回復。ポイント還元があることにより、人々が再び外食をする機会が一気に増え、飲食業界にも活気が戻ってきました。

GoToEatロゴ

さらに2021年10月、緊急事態宣言が明けた際、私たちは「いち早く多くの店舗様と接触を図ろう!」をモットーに活動を開始し、11月、12月は達成率150%を超える最高の結果を残すことができました。

このV字回復は、コロナで苦しいときに「お店のパートナーであり続ける」という信念を貫いた会社と現場の努力が、お客様からの信頼という形で返ってきた瞬間でした。

3. トンネルを抜けて、食べログの「今」へ

3年ぶりの忘年会で見た景色。そして20周年を迎えた食べログが目指す”未来の外食体験”

激動の2020年と2021年を経て、私たちが迎えた2022年。この年は、年間を通じて感染は続いたものの、「まん延防止等重点措置(まんぼう)」が3月に全国で解除され、行動制限が緩和され始めた転換期でした。

現場の努力もあって、営業活動は徐々に通常を取り戻しつつありました。もちろんコロナの緊張感は続きましたが、この困難の時期に得た経験は私たちにとって大きな財産となりました。

そして2022年12月、本当に感動した出来事がありました。
私が部長になって初の部内忘年会が開催された時です。

コロナ禍直前に入社した私を含め、多くの社員が困難な状況下で顔を合わせる機会も少なく戦い続けてきました。部内メンバー全員が集まった会場で、無事に一年を終えられたことを労い合った瞬間は、言葉にできない喜びがありました。
「あの先の見えないトンネルを、みんなで励まし合ってやり抜いたんだ」という確かな実感と安堵感が、会場中に溢れていたのを覚えています。
緊急事態宣言からGo To Eatキャンペーン、そして賑わいが戻り始めた現在までを振り返った動画を作成、MISIAさんの「明日へ」をバックで流し、この2年間が走馬灯のように思い出され、涙なしでは見れなかったです。
この動画は今でも私の宝物です。

そして2023年5月、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類へ移行しました。これにより、社会の行動制限は大幅に緩和され、私たちの戦いも一つの区切りを迎えました。

この激動の4年間で、食べログは多くのことを学びました。

  • 困難な時こそ、「お店を支える」という使命を貫くことの大切さ
  • お客様の状況に合わせて、サービスを柔軟に、迅速に変えていくスピード感

これらの経験は、20周年を迎えた食べログが目指す未来にも生かされています。例えば、コロナ禍でリリースされた「食べログテイクアウト」「食べログデリバリー」「食べログモール」のような新しいサービスも、困難な状況下で生まれた挑戦の一つです。
近年では「食べログノート」「食べログオーダー」「食べログ仕入れ」「食べログ求人」などのサービスをリリースし、集客課題のみならず飲食店の経営課題を多角的に解決するサービスを立て続けにリリースしてきました。
私たちは、コロナ禍を乗り越えたという経験を糧に、これまで以上に飲食店とユーザーの皆さまを強く繋ぎ、「最高の外食体験」を提供し続けるプラットフォームでありたいと強く思っています。
そして、事業拡大に伴い、食べログの営業組織もより大規模になって参りました。
2025年には千葉県と兵庫県にも営業所を設け、営業本部の人員数は400名を超えます。
これからも目の前の飲食店様に真摯に向き合い、お店の発展に貢献する食べログの価値を提供し続けていきたいと思います。

4. 営業マンから飲食店コンサルタントへ

2025年から営業本部方針を新たに定めました。
それは「飲食店コンサルタントになろう!」

飲食店コンサルタントとして必要な7要件を定義し、各要件に対して営業担当個人ごとに現在のステータスを把握できる仕組みを構築しました。
これは、営業マンは「売る力」だけが評価されるのではなく、「飲食店の経営課題に対し様々なソリューションを提案/活用し解決に導く飲食店の経営パートナー」になることが評価されるということを意味します。
これに伴い営業本部は年に1度、成績優秀者を称える表彰会を開催しておりますが、新たにもう1つの表彰会を作りました。

その名も「Best Practice Award」です。

予選会を経て選ばれた代表者による飲食店に対して課題解決を行ったメンバーのプレゼン大会です。
これはナレッジ共有と賞賛文化を体現したものとなっており、会場は大きな熱気に包まれました。
素晴らしい事例の数々を見ることができ、プロダクトやサービスの重要性はもちろんのこと、「営業の価値」というものを改めて感じることができました。
AIという武器を手に入れた我々はそれを最大限に有効活用しつつも、人が人に提案するという形は不変なものであり、そこにはAIが取って代わることができない「人の介在価値」が確実に存在します。
今後も食べログサービスを多くの方にご利用頂くために「信頼される営業組織」を目指していきます。

プレゼン大会3

まとめ:飲食店とユーザーに喜ばれる食べログであり続ける

改めて、食べログ20周年という節目に、このブログを読んでくださり、本当にありがとうございます。

私が体験したコロナ禍は、会社にとって、そして外食産業にとって、間違いなく最大の危機でした。
しかし、その困難な日々こそが、私たちに「サービスの在り方」を深く問い直す機会を与えてくれました。
それは、目先の利益よりも「お店の存続」を最優先する覚悟であり、数字上の契約数(純増)以上に、「一軒一軒のお店と真摯に向き合い、信頼関係を築くこと」の大切さです。
現場のメンバーが泥臭く奔走したのは、自分たちの成果を証明するためではなく、「大好きなあのお店に、これからも在り続けてほしい」というシンプルな願いからでした。

普段、皆さんが何気なく利用している「このお店に行ってみようかな?」の裏には、こうした戦いを乗り越えた、多くの飲食店と食べログの社員たちの汗と努力が詰まっています。

ぜひ、変わらぬご愛顧と、飲食店への温かい応援をよろしくお願いいたします!

明日は @tkyowa による『食べログ黎明期の振り返りとAI時代のこれから』です。お楽しみに!


食べログでは、20年の歴史を未来へ繋いでいく仲間を募集しています! ご興味のある方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。