Tabelog Tech Blog

食べログの開発者による技術ブログです

ユーザーの声を聞き、プロダクト成長にコミットするための取り組み

目次

はじめに

食べログシステム本部 技術部 仕入チームの安川と申します。新規事業の食べログ仕入というプロダクトの開発業務に携わっております。

食べログ仕入のエンジニアは、ユーザーの声を純度100%でインプットしてプロダクト開発に取り組んでいることが特徴です。

今回は、そんな食べログ仕入で行っている取り組みや、それがもたらすメリットを紹介していきます。

食べログ仕入について簡単に紹介

食べログ仕入LP 食べログ仕入は、飲食店、卸業者間を結ぶ飲食業界に特化したWeb受発注サービスです。

2019年に飲食店がスマートフォンから操作すると卸業者のFAX番号、メールアドレス宛に食材発注の連絡が送られる発注サービスの提供がスタート。その後、卸業者側より受注に関する業務をWeb上で行えるようになったら嬉しいという声があり、2021年より卸業者が飲食店からの受注情報をWeb上で受付・集計できる受注サービスの提供も始まりました。

プロダクトチームは最初10名ほどでスタートし、コロナ禍で開発がストップ、再開した時は3名という時期もありましたが、今では企画、営業、カスタマーサポート、エンジニア、デザイナーなどあわせて15名ほどのメンバー構成となっています。

現在、食べログに登録されている飲食店やあらゆる業種の卸業者に利用いただいており、さらにたくさんの方々に利用してもらえるよう活動を続けています。

ユーザーの声、純度100%の秘訣

秘訣はシンプルで、プロダクトに関わる全員でユーザーの声を聞くことです。

この秘訣に至った経緯は、食べログ仕入がサービス提供している、飲食店と卸業者の課題にあります。

課題解消のためには仮説検証を繰り返し、そのサイクルを高速で回す必要があります。 認識の違いや目的理解に余計な時間を使わないという点でも、全員でユーザーの声を聞き、プロダクト開発に当たっています。

飲食店と卸業者の課題

課題とはアナログで非効率な発注作業や集計作業に時間、コミュニケーションコストを取られ、本来集中したい業務に時間が取れていないというものです。

食べログ仕入を通じて受発注のデジタル化をしようと活動をしていますが、アナログからデジタルへ移行の壁がたびたび立ちはだかります。例えば以下のケースです。

  • DX移行を進めようとしても、卸業者の経営層と受注業務の担当者、飲食店のオーナーと従業員の間に温度差がある
  • 既存の業務フローを変更することによる説明・切り替えを面倒に感じたり、新たな納品エラーやクレームなどが発生することへの恐れ
  • PC・スマホでの操作に慣れていない方が多く、ID・パスワードを利用したログイン認証などWebサービスで一般的な機能の操作に苦戦する

このような多岐にわたる課題を1つずつ解決できるよう、チーム全員で取り組んでいます。

ユーザーの声を聞き、プロダクト開発に活かしていくための取り組み

次にチームの具体的な取り組み、仕組みを紹介していきます。

ユーザーへの訪問同行、オンラインミーティングへの参加

食べログ仕入のエンジニアは、営業チームのメンバーが設定した訪問やオンラインミーティングに自由に参加できます。

チーム全員がユーザーの一次情報に触れて、認識を合わせてプロダクト開発に活かしていきたいというのが始まりです。

参加するのは既に使っているユーザーへのインタビュー、これから使いたいと思っているユーザーへのオンボーディング、新たな機能の説明会などがあります。 インタビュー

利用を前向きに考えていたり、サービスを気に入ってくれてインタビューを受けてくれるユーザーなので、訪問する際には歓迎していただけます。

私自身も飲食店、卸業者、どちらも訪問同行させていただいたことがあります。

  • 画面がとても見やすく、使っていて困ったことはない
  • 発注先の外国の方にもわかりやすい発注ができたら嬉しい

といったポジティブな声や意見を直接いただき、貴重な経験をしました。

また、直接食べログ仕入を触っているところを見せていただけることもあるので、そういったところから新たな改善案が生まれることもあります。

ユーザーになりきってプロダクトを触る会

プロダクトを触る会 定期的に飲食店、卸業者になりきってプロダクトをチームみんなで操作してみる会があります。 毎回考えられたシナリオを元に操作して、プロダクトの気になるところや改善案を出す会になっています。

リリース前に問題点を洗い出したり、また、ユーザーがプロダクト全ての課題を見つけて教えてくれるわけではないので、この会で見つけ出そうというのが目的です。

例えば、前回実施したときのシナリオは以下になります。

  • 卸業者の営業になりきって受注サービスをスマホで触ってみる
  • 具体的に行う操作
    • 担当している飲食店が発注できる商品のリストの作成、注文商品の追加・編集、問い合わせ対応
    • まだ食べログ仕入を利用していない飲食店の招待

ユーザーになりきって操作することで開発している時には見えてこなかった課題などが見えてくるのが面白く、この会で出たアイデアが毎回、改修案件などにつながっています。

エンジニア朝会で案件の目的を確認し合う

定期的にエンジニアの朝会で自身が担当している開発の目的をエンジニア内で共有する時間があります。

ユーザーの声、開発の目的・内容を認識齟齬なく1つの線で捉えるための取り組みです。

説明をしてフィードバックをもらうことによって、目的を正しく捉えられているか振り返ることができます。 また、説明を聞くことにより、自身が関わっていない開発についても理解を深め、後の機能追加や改修案件などにも開発の経緯を把握した上で取り組むことができます。

プロダクトバックログの成果・指標ごとによるカテゴリ分け

プロダクトバックログ 食べログ仕入ではプロダクト目標の成果・指標ごとに開発案件をプロダクトバックログで優先順位づけ、リスト化しています。

成果・指標は「○○機能利用率○○%を目指す」、「ユーザービリティの改善」といったようなものがあり、そのカテゴリごとに開発案件のスケジュールが引かれています。

これによって、新たに参画したメンバーや、日々の業務に追われている時でも開発の目的を確認できる工夫をしています。

また、プロダクトバックログはチームで毎日確認する時間があるため、この案件はユーザーにどのように影響するか、チームが今どの成果・指標に対して注力しているかなどを確認できます。

開発時、指標を達成するためのUI・機能になっているかを意識したり、リリース後、指標に近づいたかデータを取得してチームへ共有といった動きにもつながります。

ユーザーの声を聞くことのメリット

上記のような取り組みをしていくことのメリットとして以下の点が挙げられると考えています。

  • 状況に応じた開発計画が立てられる
  • 開発の成果物の質が上がる
  • プロダクト開発以外のアウトプットにもつながる
  • 業務へのモチベーションにつながる

1つずつ説明していきます。

状況に応じた開発計画が立てられる

ユーザーを理解することで要求を全て組み込んだサービスを提供するのではなく、ユーザーが必要な機能・やりたいことを見極めて、一部の機能のみをリリースして先にユーザーの負荷を軽減するように開発計画を立てる、といった動きをとることもできます。

今年の9月に卸業者の営業・配送担当専用アカウントを作れて、外出先で確認できるように、スマホに最適化した表示モードをリリースしました。 こちらはユーザーの声などもあり、少しでも早くリリースをしたい案件でしたが、当初の予定ではリリースまでにかなりの工数を要する必要がありそうでした。

そこでリリースに向けて今後の開発計画について話し合いを進めました。

  • リリース直後から利用し始める卸業者がそこまで多くなさそうなため、本当に初期リリースに必要なものだけ開発
  • 営業・配送担当専用のアカウント作成画面は一旦機能から外して、作成は運営チーム側で随時対応

上記の内容をもとに計画や体制を見直した結果、リリースまでの期間を短縮できました。

こちらについてはエンジニアがユーザーへのヒアリング結果をもとに、初回リリースに必要な機能・画面を把握し、要件をチームで話し合うことができた点も大きかったです。

開発の成果物の質が上がる

ユーザーについて考えるのを当たり前にすることで、ユーザーの声・技術面双方の観点で考え提案でき、開発の成果物の質が上がります。 降りてきた要件通りに開発するのではなく、要件定義の段階から開発中まで目的にあった要件が満たされているか、漏れがないか、という点を意識できるためです。

例えば以下のような事例がありました。

1つ前で紹介したスマホに最適化した表示モードを開発した時に、リリースを間近に控えたタイミングで注文履歴の一覧画面の表示が遅いという問題がありました。

表示用データ取得時の非効率な処理が原因でしたが、表示データの取捨選択や、ユーザーがアクションするまで非表示の情報はAPIを分けるなどの対応をしました。 結果、ユーザーのニーズを満たしつつ表示速度も問題ないレベルでリリースできました。

こちらはエンジニアがユーザー、システムの双方を把握しているからこそ取れた迅速な対応でした。

プロダクト開発以外のアウトプットにもつながる

プロダクトの開発以外にも外部サービスを利用した、以下のような取り組みをおこなっています。

  • 食べログ仕入へのお問い合わせ内容のタスク作成を自動化
  • ユーザーが食べログ仕入のデータを変換してその他の業務ツールに取り込む際の変換ツール

これらを通じてプロダクトチームの業務効率化にも貢献し、結果、ユーザーへのフォロー体制の強化につながっています。

業務へのモチベーションにつながる

プロダクト開発から話は逸れますが、ユーザーを知り開発の目的を知っていればリリース後にとても使いやすくなった、といった声をより自分のことのように感じられます。 また、もう少しこうなると嬉しい、といったフィードバックも純粋に今後へのモチベーションの向上につながります。

具体的には以下のような経験がありました。

今年の4月に卸業者が飲食店からの注文に関する通知を受け取れる機能をリリースしました。 優先的に受注処理の対応が必要な注文の通知を表示するという内容のため、これによって卸業者の受注担当者は早く必要な情報を検知できます。

こちらについてはリリース後にチームの営業、企画メンバーを通じてユーザーの感謝や改善案の声を聞くことができ、受注業務フローの改善に貢献できた、今後より良いものにしていこうというモチベーションに繋がりました。

まとめ

ユーザーの声を聞くための取り組みと、それがもたらすメリットについて紹介しました。

食べログ仕入はチーム全員が同じ解像度でユーザーを知り、要望・課題をプロダクトの中で1つずつ解決してきました。 それにより、ユーザーが増えて、サービスの満足度が上がり、エンジニアはプロダクト成長にコミットしています。

飲食業界のデジタル化に向けて、まだまだ先は長いですが、今後もユーザーの要望・課題を食べログ仕入を通じて解決できるよう活動を続けていきます。

最後に

食べログ仕入では新規事業におけるあらゆる業務を通じて、個人のスキルアップやプロダクト成長に貢献したいと考えているメンバーを募集中です。

気になった方は以下のリンクを是非チェックしてみてください!