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前代未聞!?新卒で食べログの企画職に配属された話

この記事は 食べログアドベントカレンダー2023 の5日目の記事です🎅🎄

こんにちは。食べログのユーザーサービス企画部プロダクトチームの山下です。
ユーザーサービス企画部は、食べログをユーザーにとって価値あるサービスに成長させるための企画を立案する部署で、プロダクトチームでは主にアプリのグロースハックに取り組んでいます。

私は2023年に新卒で入社しましたが、食べログの企画職への配属は異例でした。
というのも、食べログのメディア側の企画メンバーは中途入社の方が中心で、前回新卒が配属されたのは10年以上前だったからです。
私も配属前になんとなくその話は聞いており、企画志望ではあったものの食べログに関わることは全く想定していませんでした。
しかし、カカクコムのサービスで一番利用していたのは食べログであったため、個人的には喜ばしい出来事でした。

そのような環境で約半年が経ち、これまでに担当した案件は30件以上になりました。

この記事では半年間の経験からの学びや、入社前後で感じたギャップをお伝えしていこうと思いますので、

  • プロダクトマネージャーに興味がある  
  • プロダクトマネージャーを志望している  
  • プロダクトマネージャーとして就職予定である  

という方の参考になれば幸いです。

※新卒採用の募集職種はWebディレクターですが、食べログの企画職の業務範囲はそれよりも広く、プロダクトマネージャーに近いです。
そのため私は「駆け出しのプロダクトマネージャー」ととらえていただければと思います。

目次

私の就職活動

簡単にまとめると、

  • 高校生の頃から商品企画の仕事に興味があった  
  • 多くの人の日常に影響力がある有形商材に関わりたかったので、菓子・日用品・玩具メーカーを見ていた。 IT系で関わった企業はカカクコムのみ  
  • メーカーのマーケティング職が狭き門であることは承知で志望していたが、企画に関われずに営業一筋になることは避けたかった。 新卒で企画の門が開かれており、生活に身近なサービスを提供するカカクコムに魅力を感じて入社した  

という流れです。

就活を始めた当初は、実際に手に取ってもらえる魅力から有形の商材に関わることにかなりこだわっていました。
そのため最後の方向転換には自分でも驚きつつ、今となっては正解だったと思っています。
なぜ正解だったのか?その理由は次章で述べる「アイデアが世に出ていくサイクル」です。

今週考えた企画が、来週にはユーザーに届く世界に驚く

これまでの企画職のイメージ

私が入社前に持っていた企画職のイメージは以下のようなものでした。

1つの企画にかなりの熱量をかけて準備し、プレゼンを経て誰かの企画だけが選ばれる。
新人のうちは先輩の企画に圧倒され、毎日次回のプレゼンのアイデア探しでプライベートと仕事の区別がつかない…

まとめると「企画提案のサイクルは月2回ほどで、そこでアイデアが採用されなければ次のプレゼンまでチャンスはない」といった捉え方でした。

食べログの企画職は違う!

食べログの企画職は私のイメージとは大きく異なっていて、アプリのアップデートを毎週行っているので、簡単にいえば  

  • 企画が世に出るチャンスは毎週
  • 提案のサイクルは何か思いついたらいつでも

です。

提案といっても堅苦しいものではなく、企画メンバーとの雑談での何気ない一言が賛同されて、実際に企画として動くこともあります。  

また一つ一つの企画で手の込んだ企画書をパワーポイントで作る必要はなく、企画を形にしてくれるデザイナー・エンジニアの方の理解を助ける仕様書のようなものを作成すればOKなので、必要以上に凝った資料作成に時間を費やすこともありません。
それがスピード感ある企画を生んでいるのだと感じます。  

アイデアの生まれ方

企画のアイデアはそんなに頻繁に出てくるものなのか?という疑問もあると思います。
私も入社前、ユーザーとして深く考えずに食べログを使っていても特に不便な点は感じておらず、完成されたサービスだと思っていました。

しかし改善点を探そうと細かい点にも着目して操作すると、意外にも違和感を覚えるポイントが見つかります。
例えば、ボタンの名前と実際の挙動が違ったり、遷移したい場所に遷移できなかったり。

私は社歴の浅さからいうと「一番純粋なユーザーに近い人」になるので、ユーザーとして感じていた疑問がアイデアの種になっています。
この感覚を社歴が長くなってもいかに失わないようにするかが重要だと考えていて、ユーザーは何をしたくてこのボタンを押すだろうか?と気持ちを想像しながら操作することを大切にしています。

一方で今の自分は先輩方と比べて、改善点を見つけてもどう改善すべきか、最適解を発想する能力がまだ不足していると感じます。
また自分が違和感を覚える部分のみに注目してしまい、特段不満を感じていない機能の改善やこれまでにない機能の追加と向き合うことになったときの発想力も課題です。
そのため先輩との会話で疑問点があった際は「なぜそう考えたのか」を質問して納得感を持って進めることで、先輩と同じような発想を生み出せるように努力しています。

ここまでは「アイデアを生み、世に出す」という観点でのギャップを書きましたが、次章ではそれ以外の業務で感じたギャップをお伝えします。

企画して終わりではない

Webディレクターを誤解していた

入社前の私はWebディレクターを「Webページを改善するアイデアを考える仕事」ととらえていました。
企画を生むというところにフォーカスしており、それを形にするための手段や形にした後のことについては、あまり深く考えていませんでした。

ところが実際に仕事をしてみると、アイデアを考えるのは仕事全体で見るとごく一部で、名前の通り”ディレクター”であることを痛感しました。
そして冒頭でも述べましたが、食べログの企画職の業務範囲はさらに広いため、Webディレクターではなくプロダクトマネージャーという表現の方が適切で、入社前の想定を大きく超える業務範囲でした。

2つの違いを簡単に説明すると、Webディレクターは与えられたプロジェクトを円滑に進行するというプロジェクト単位での動き方であるのに対して、プロダクトマネージャーの視点は個々のプロジェクトだけでなく食べログというプロダクト自体の成長にも向いているという違いがあります。
プロダクトマネージャーはユーザーに価値ある食べログの実現を目指し、さまざまな企画立案とその進行を通してプロダクトの飽くなき改善を続けます。

以下はすべて食べログの企画職の仕事内容です。
①食べログのグロースにつながる施策を起案する
②企画を実現するために、詳細な仕様を決める
③デザインの調整
④デザイナー、エンジニアの進捗確認
⑤エンジニアからの仕様に関する質問に対応する
⑥企画確認(エンジニアが実装したものが意図した挙動になっているか確認する)
⑦リリース後の確認
⑧リリース後の効果計測
(解析ツールを使ってリリース箇所のインプレッションを見たり、SNSでユーザーの反応を確認するなどして企画の目的が達成できているか分析する)

私はプロダクトマネージャー見習いのため、①で起案した企画を単独で意思決定して進行した経験はまだありませんが、前章で述べたように先輩にアイデアを提案して効果的だと判断されれば企画として動かすことができます。

このように仕事内容は幅広く、必要なスキルはシステム・デザインに関する知識や分析力、コミュニケーション能力など広範囲にわたります。
さらに企画の種類ごとに効率的な進め方が異なるため、すべて上記の型にはめて進行すればうまくいくというわけではありません。
先輩は経験則に基づいて企画ごとに適切な判断をしますが、それを自分の中で言語化し、今後同じ種類の企画を担当する際に進め方のイメージを持てるようになるまでは長い道のりでした。

また、配属当初は同時に1,2件の企画を担当することから始まり、今では最大8件ほどを同時に担当していますが、正直ここまで多くなるとは思っていませんでした。
予期せず人生最大のマルチタスクと向き合うことになったわけですが、ここからは私がマルチタスクについて思うことや、どのようにこなしていったかをお伝えできればと思います。

マルチタスクと向き合う

各企画の担当と進捗を把握する難しさ

8つの企画を担当する場合、それぞれにデザイナー1名・エンジニア1名(2名以上のこともある)がアサインされていますが、企画メンバーから「Aさんは今何の企画をどこまで進めているのか」と聞かれてすぐに言語化できる状態にする必要があります。
そのため、最初のうちは英単語とその意味を覚えるように、「Aさん=口コミ投稿画面のリニューアル」「Bさん=店舗ページのUI変更」と人と案件名を対応させて把握しようとしていました。

しかし企画がリリースされるごとに人に対応する案件はコロコロ変わるので、単純に文字として覚えると定着しづらいとわかりました。

そこで、エンジニアやデザイナーとのやりとりの内容、案件の背景や目的、使用してくれるユーザーのイメージなど、事柄を線で繋いでストーリーにし「絵」で覚えることで、記憶の容量が増えて言語化のスピードが早くなりました。
難しいことのように聞こえますが、連想ゲームのように「AさんのTeamsのアイコンは犬だったな」「犬のAさんから最近〇〇についての仕様相談がきていたな」「そういえば猫アイコンのBさんからは△△についての仕様相談きていたな」といったレベルの思考を繰り返すことで企画の担当・進捗を整理しています。
また、チャットの返信漏れも防げるため円滑なコミュニケーションの実現にも役立っています。

配属3ヶ月目からは、案件のディレクションに加えて「カスタマーフライデー」という毎週金曜日に行っているユーザーインタビューの運営担当も務めるようになり、マルチタスクの幅が広がりました。
(カスタマーフライデーについて詳しく知りたい方は↓の記事をご覧ください)

マルチタスクは、多忙なバイトでオーダーをさばく感覚に似ている

マルチタスクをこなせるかは慣れで成長する部分もある一方で、楽しく自分のキャパを広げていけるかという点も重要だと感じます。

私は学生時代にカフェでアルバイトをしていましたが、シフトは平日の朝など落ち着いた時間ではなく土日の昼といったお客さんが多いタイミングに入れることが多かったです。
その理由は、効率的にドリンクを作ってオーダーをさばくのが楽しかったからです。
複数のオーダーを把握した後、紅茶は先にお湯を準備して蒸らしておいて、すぐに提供できるコーヒーはスムージーを作る機械の横にあるからスムージーが完成したタイミングでいれよう、といったパズルをいかに速く組み立てるかを極めていました。

企画職でのマルチタスクは半年かけてようやく習得したもので、もちろん容易なものではありませんでした。
慣れるまでは案件の進行に追われている夢をほぼ毎日見るくらい、脳のキャパがオーバーしていました。
しかし、8つの企画を同時に担当できるようになった今では、バイトで多くのオーダーをさばいていた頃のような楽しさを感じ始めています。  

このように、プロダクトマネージャーの業務ではマルチタスクのスキル習得は避けては通れない道です。
そのため、自分の身の回りにあるマルチタスクを楽しいと思っているかは、プロダクトマネージャーを目指す前に1度考えてみてもよいかもしれません。

さいごに

就活時代に自分も驚く方向転換をし、新卒で食べログの企画職に配属されるという前代未聞の経験を振り返ってみて思うことは「自分の好き・やりたいに縛られすぎず、一度離れて考えることも重要」ということです。
カカクコムとの出会いがなければ私はメーカーで営業職をしていたかもしれませんが、新卒の半年間で30件以上の案件を担当する(=自分が手がけたものが30件以上世に出た)経験はできなかったと思います。
就活〜新卒1年目で、好きを貫く情熱を持ちつつも、ときには俯瞰して別の選択肢を考える重要性を学びました。

プロダクトマネージャーという職に出会えたことを大切にし、食べログのグロースに貢献できるよう自分自身も日々成長し続けていきたいです。

明日は @h_sakura の「食べログAndroidアプリ開発のグロースアップ事例紹介」です。お楽しみに!