こんにちは。食べログシステム本部アプリ開発部でマネージャーをしている原です。
以前、iOSDC Japan 2023 参加レポート#4 スポンサーブースのまとめという記事を書いていて、2度目の執筆になります。
今回は、Tabelog Developer Dojo(以後TDDとします)に関する連載です。
この記事がその最初の記事となるもので、本記事では主に「XP祭り2023」の様子を紹介します。
目次
TDDって何? 道場破りとはどういうこと?
TDDについては、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
要は社内の勉強会の取り組みで、有志メンバーがいろいろな企画を考えて、形式やメンバーにとらわれずに日々学びを得るために活動しています。
今回の道場破りについてもその企画の一つです。
道場破りの由来や経緯については、連載の後続の記事に詳細を譲ることにしますが、社内勉強会の枠を超えて外部の勉強会に食べログとして参加していこうぜ、というものです。
参加の経緯
私はTDDで何度か発表させていただく機会があり、お誘いを受けてオフィシャルパートナーという形でTDDに関わっています。
それもあって今回の道場破りもお声がけしてもらいました。
オンラインのイベントなのですが、TDDメンバーで集まって参加することを計画していて面白そうだと思いました。
紆余曲折あってTDDメンバーの自宅に集まることになったのですが、この辺りは後続の記事で取り上げていますので読んでいただけると幸いです。
XP祭りとは
XP祭りとは、日本XPユーザーグループ(エクストリームプログラミングを広める活動を中心に行っているコミュニティ)主催の、年に一度のイベントです。
1日がかりでさまざまなセッションや企画が催され、オンラインで600人近い参加者が参加するような規模のイベントになっています。
エクストリームプログラミング、スクラム、リーン、ペアプロなどの内容だけでなく、ビジネスやマネジメント、UX、DevOps、あるいは最新技術やコミュニケーションなどに関するテーマの発表もあります。
午前中はオープニングと基調講演のみですが、午後には最大8つのTrackで並行してセッションや各種企画が行われていました。
セッション
拝聴したセッションについて、いくつか紹介させていただきます。
832イテレーション・ジャーニー Toshihiro Ichitani
市谷聡啓さんによる基調講演です。カイゼン・ジャーニーの著者としてご存知の方も多いのではないかと思います。
タイトルの832というのは、「16year × 52week = 832イテレーション」ということで、一週間スプリントの16年分とのことです。つまり、16年間の集大成を発表していただけるということですね。
90分枠で、発表部分だけで70分というボリュームなので、印象的だったフレーズをいくつか記載しておきます。
- 周りの気温が上がるのを待っているほど、人生は長くない
- ギルドワークス社を出てレッドジャーニー社を立ち上げるくだりにて
- 度を過ぎた最適化=思考停止
- 組織の構造、役割、業務、技術、意思決定にいたるまで「効率性」に最適化したつもりが、「非効率での安定化」になった
- 伝統組織における変革とは「探検」である
- 業務上の決まりごとの謎、現状システムの謎、意思決定者またはその基準の謎に向き合う必要がある
- ちゃんと相手と出会う
- 相手の文脈に接続しにいく、相手の向こう側にある背景に目を向ける、ことが大事
- 組織変革にこそ、「仮説検証」で臨む
- 組織変革こそ、不確実性に向き合う試みに他ならない
- 組織変革の前提は「From-To」、どこから、どこへいくのか
- 「To(理想的な状態)」だけでは現状からのGapが見えない(差分として捉える必要がある)
- 組織の「芯」とは、経営から現場まで、共に共通として持てる「意図」のこと
- 組織は存在するようでしないもの、一人ひとり、または集まりなので、目を向けるのは「組織」という概念ではなく「人」
- 「意図」は一人ひとり異なり、「芯」ははっきりとは描けない、なのでそれぞれがFromからの変化の一歩を踏み出す必要がある
上記ピックアップだけで伝わり切るとは思いませんが、伝統組織における変革という難題に対して「探索」した中で得られた気づきが存分に語られたということはお分かりいただけたかもしれません。
市谷さんはカイゼン・ジャーニーを始めいくつもの著書があり、いくつか拝読させていただきましたが、直近の数冊はまだ読めていないため、そちらを読むことでさらに理解を深めたいと思います。
食べログでも、以前ギルドワークス社の現場コーチに入っていただいたことがあり、さまざまな取り組みで開発の現場を改善しようという取り組みがありました。その甲斐もあって、いまでは振り返りやモブワークの文化が根付いていたりします。
また、私の所属するチームでは、数年前よりマトリクス型組織に移行し、まさに不確実性に向き合いながら試行錯誤し、ユーザーにより多くの価値を素早く届けられるような組織へと変わってきた経緯があります。
それらの経緯と今回の発表は多くの点でリンクするところがあり、納得感もありつつ、自分自身のジャーニーについても想いを馳せる良い機会となりました。
すぐに使える! システム思考を現場で実践するための3つのやりかた Keita Watanabe
Keita Watanabeさんによる発表です。
最近目にすることが増えてきた「システム思考」。関連図書は買ったものの、まだ読んでいなかったため拝聴しました。
システム思考とは、「ものごとの関係性や全体像を見て本質を考える」こと。
狭義のシステム思考としてはツールや考え方があって、これらを使いこなして実践することが必要なようです。
いくつかのツールについては例を用いて紹介してくれていて、これは業務でも活用できそうに感じました。
全体を俯瞰して関連性に注目しつつ現状を把握したり課題に取り組むということは多くの場面で求められると思います。
より深く知りたいと感じたので、積読になっているシステム思考の本を読まねばと思いました。
スクラムマスターを目指すためにギャルになってみた話 hiroki kinoshita
hiroki kinoshitaさんによる発表です。
スクラムマスターについて興味が、、いや、実際のところはタイトルに釣られました。インパクトがすごい。
内容としては、サーバントリーダーシップの極意はギャルマインドにある、というものでした。
以前のチームでは課題解決のためにリーダーをおいたがそれによってストレスフルになり、スクラムに救いを求めたがなかなか上手くいかなかったそうです。
マインドを入れ替える必要を感じ、サーバントリーダーシップの特性を見返した時にギャルを想像し、発言にもギャル的な言い回しを用いるようになり、最終的にチームが育ってきたとのこと。
話の流れもうまく、納得してしまいました。
食べログでもギャル語で接する人が増えたら面白いですね。
「Fearless Change」と心理的安全性への旅 Yasunobu Kawaguchi
Yasunobu Kawaguchiさんによる発表です。
資料はありませんでしたが(間に合わなかったようです)、45分枠のもともとの構成案とアドリブでやり切ってくれました。
Fearless Changeの話や、Google re:Workを参照しつつ心理的安全性を話してくれたりしました。
途中、アメリカンドッグを食べる場面があったり、話のとっかかりを話してDiscordでの議論を促したり、参考資料の共有を聴講者に委ねたりと自由度の高い発表でした。
ネガティブな感情はポジティブなものに比べて3倍強く感じ、これをイーブンにするためにFearlessな心を持つ必要がある、というのは考えさせられました。
この辺りも一度しっかり学んでおきたいと思いました。
ビブリオバトル
おすすめの書籍を紹介し合い、最終的に投票で決着をつけるバトル形式の企画です。持ち時間は5分です。
後半だけしか聞けていませんが、さまざまなジャンルからアジャイル関連本という体で紹介いただきました(本人がアジャイルの本と言い張れればそれで良いのだとか)。
- hnisiji『プログラミングの心理学』
- bash0C7『スクラムの拡張による組織づくり』
- toyamarinyon『庭のかたちが生まれるとき』
- Shogo Miura『Thinking Baseball 甲子園優勝』
- naokomada『時間の比較社会学』
- take_3『星を継ぐもの』
投票のトップは『時間の比較社会学』でした。
本来のジャンルから外れていても、自身の置かれた環境や考え方と照らし合わせて学びを得ることができるということを感じました。
自身の好きなもの、オススメしたいものを自身の解釈で説明する時の熱量は、セッションのそれともまた違っていて楽しめました。
LT大会
LT大会はセッションとは別に募集され、応募した人が登壇することになっていて、食べログからは「TDD道場破り」の一環でaraiguma47さんとhagevvashiさんが参加しました。
食べログメンバーの登壇については、後続の記事にてレポートしますので、見ていただけると幸いです。
一通りセッションが終わった後に開催され、もう他のTrackでのコンテンツはないため参加者はみなさんLT大会に集中することになります。5分枠で時間切れで打ち切られてしまうため、緊張感が高まりますね。
発表者と、発表資料は下記の通りです(資料は公開されている方のみ)。
- なかしょ:よりよいペアローテーションを求めて
- J.K:俺の推し活〜わたしとみしま〜
- asato:とりあえずモブプロしてみたら時間が溶けた
- retsu:あなたは何を飲む?
- Atsushi Fukui
- araiguma47:勉強会開催するにあたりFEARLESS CHANGE本を実践してみた
- roki
- hagevvashi:○郎系ラーメンを注文したつりだったのにトールバニラノン ファットアドリストレットショットチョコレートソースエクス トラホイップコーヒージェリーアンドクリーミーバニラフラペチーノが出てきた話 〜ミスコミュニケーションが起こした悲劇〜
- satyaoao:EQを高めて不快な感情に立ち向かえ
- soymd
雰囲気としては、XP「祭り」というだけあって、ワイワイした感じで進行されていました。
業務での発見や学びの共有などがそれぞれの持ち味を生かした形で紹介されていて楽しかったです。
クラウドサービスをお酒に例えて紹介してくれた発表は面白かったですね。
「TDD道場破り」としては、私はTDDメンバーの自宅から参加していたので、hagevvashiさんの発表を後ろで応援していました。
お祭りとしてしっかり盛り上がれて、他の参加者のみなさまにも「TDD道場破り」の熱量をお伝えできたのではないかと思います。
その他の企画
書籍プレゼント
XP祭りでは、協賛のメディア各社・コミュニティから技術書の寄贈を受けていて、これを参加者にプレゼントしてもらえるという企画があります。
XP祭り2023:協賛・寄贈本
事前にDiscordでエントリーをした人を対象に、初参加の方を優先しつつ書籍をもらうことができます。
スプレッドシートにリストがあり、クロージングでちょっとづつ対象が解放されていき、名前を書くことでもらえました。
今回食べログから参加したメンバーは初参加の方も多く、集まったメンバーで以下の書籍をもらいました。
- オブジェクト指向UIデザイン(私がもらったのがこちら)
- ゾンビスクラムサバイバルガイド
- 米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方
- 達人プログラマー(第2版): 熟達に向けたあなたの旅
これは嬉しいですね。
回し読みしようとか社内で内容を共有する会を行おうかなどと話しています。
懇親会
クロージングの後は懇親会がありました。
オンラインイベントなので、Discordでの音声のみでの懇親会です。
5つくらいのルームが作られていて、各々自由に行き来されていました。
1人だとちょっと勇気が出ない形式だと思いますが、食べログのメンバーと一緒だったため抵抗なく入れました。
登壇者や運営の方と話す機会になりましたし、食べログのメンバーと面識のある方もいて盛り上がりました。
これは今回の参加形式によるメリットの一つでだったと思います。
まとめ
「XP祭り2023」に参加する機会を得て、多くの学びを得ることができました。組織変革についての考え方やシステム思考について、あるいはサーバントリーダーシップの考え方や心理的安全性など。
XP祭りはIT系のイベントでは歴史もあり、面白い企画があったり、書籍のプレゼントなどもあったりと楽しむことができました。
また「TDD道場破り」としても、食べログのメンバーと集まって勉強会に参加し、同じ時間と空間を共有する中で学びも共有し合うことができましたし、メンバーの登壇を間近で応援したり、その様子を配信するようなこともでき、食べログのエンジニアとしてのアピールにもなったのではないかと思います。
今回のイベントをきっかけに、また新たな道場の門を叩いていくことになるかもしれません。
さいごに、食べログではエンジニアを募集しています!
もし、食べログにご興味を持っていただけた方は是非下記の採用情報ページをチェックしてみて下さい!
カジュアル面談も大歓迎ですので、ご希望の方はフリーテキストに、「カジュアル面談希望」と記載ください。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!